自民党の宮崎謙介衆院議員(35)が辞職願を提出した。国会議員である妻の出産直前の、女性タレントとの不倫が報じられた。国民をも裏切る不適切な行為であり、断じて許されない。辞職は当然だ。
今となっては片腹痛いが、重大な問題提起ではあった。宮崎氏が表明した国会議員としての育児休暇(育休)取得である。
妻は同じ自民党の金子恵美衆院議員(37)。宮崎氏は、金子氏の出産に合わせて育児のために国会を一カ月程度休むと表明し、男性の育休を推進する議員勉強会の呼び掛け人にもなっていた。
給与が減額される一般企業などの育休とは違い、議員歳費を全額受け取りながらの育休取得には賛否はあろうが、これを機に、男性が育休を取りやすい環境づくりが進めば、意味はあったのだろう。
だからこそ、妻の出産間近に自宅マンションに女性タレントを招き入れた行為には怒りを禁じ得ない。男性の育休推進を訴えるのと同時進行の不倫は、妻に対してはもちろん、国民全体に対する裏切り行為にほかならないからだ。
宮崎氏が不倫で議員を辞職するとはいえ、男性の育休推進は引き続き重要課題である。男性の育休取得は依然ハードルが高く、二〇一四年度の厚生労働省調査で男性の取得率は2・3%にとどまる。
子育て中の女性が働きやすい環境をつくるためにも男性が育休を取りやすくしなければならない。
この際、宮崎氏の件とは切り離して、男性の育休取得を強力に推進する政策を立案、実行することが必要だ。それが、国民から与野党に与えられた課題だろう。
宮崎氏は記者会見で「自分が主張してきたことと、軽率な行動のつじつまが合わない」と述べた。報道でようやくそれに気付くようでは、そもそも政治家としての資質を欠いていたのではないか。
宮崎氏は自民党の公募に応じて衆院京都3区の候補となり、当選した。公募には世襲を避け、人材を発掘する狙いがあるが、自民党は結果として資質を欠く人物を候補者とした不明を恥じるべきだろう。
宮崎氏の辞職は来週許可される予定で、京都3区の補選は衆院北海道5区と合わせて四月二十四日に行われる。自民党が憲法改正の足場づくりを目指す夏の参院選の前哨戦である。
与野党ともに、国会議員たるにふさわしい候補者を擁立し、正々堂々と政策論争をしてほしい。国民を裏切り、議員辞職を迫られるような候補は二度とごめんだ。
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