2016年2月13日21時12分
■『世阿弥の世界』増田正造〈著〉
《思い出す本・忘れない本、ジャパネットたかた前社長・高田明さん》
「風姿花伝」を知ったのは2年ほど前。話し方を特訓中の社員が、世阿弥のことをテレビで見て「社長が言っていることに似ている」って教えてくれたんです。
それで世阿弥を研究したこの本を読んでみたら、確かに似ているな、と。「風姿花伝」は後世のために書いた秘伝の書。僕も退任を宣言した後で、「残したい」という思いに、感じるものがありました。能と通販では次元が違うかもしれないけど、人の心をどうつかむか、考え方は基本的に一緒です。僕はカメラ屋から始めて、現場に立ち、何千回と収録を繰り返す中で、毎日反省しながら、商品の魅力を伝えるためには一体何を磨けばいいのかを、ただただ考えてきたんです。
そうしたら、世阿弥の考えに自然と似ていた。僕がやってきたのは、世阿弥のいう「序破急」や「一調二機三声」だと気がつきました。序破急とは、どう話を展開するかという構成の考え方。一調二機三声は声の出し方や間の取り方。「2万9800円!」「金利負担!」って言う、その間が1秒違ってもだめなんです。最初の10秒でどう関心を持ってもらい、お客さんの心をつかまえるか。どの時点で値段を言うか、工事費込みだと言うか、分割の話に持って行くか。声の高低や、間もとても大事。ちょっとした表現の違いで売り上げが2倍は変わります。
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