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 ウナギの稚魚「シラスウナギ」の不漁が続いている。あおりを受けるのがウナギ料理店だ。仕入れ価格の高騰でうな重やうな丼の値上げを強いられ、客離れを心配する声が上がる。そんな中、卵から成魚までの「完全養殖」の実用化に挑む研究機関を応援する募金活動の輪が、全国の店主の間で広がっている。

 稚魚の捕獲量は、1960年代までは年間200トンを超える年も珍しくなかったが、ここ10年間の平均は約15トン。乱獲や河川・海の環境悪化などが原因と指摘され、国際自然保護連合(IUCN)は2014年、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定した。

 今季のシラスウナギ漁も昨年12月から全国の多くの漁場で始まっているが、出足は鈍い。養殖量で都道府県別1位の鹿児島県は、1月31日現在で昨年同期比の3割程度(164・5キロ、県調べ)にとどまる。

 不漁は値上げに直結する。総務省によると、かば焼き100グラムの店頭価格の年平均(東京23区)は、07年の705円から14年の1249円にまで高騰した。

 そんな中、国立研究開発法人水産総合研究センター(横浜市)が10年春、完全養殖の実験に世界で初めて成功したと発表した。

 吉報を受け、「一日も早い実用化を応援しよう」と動き出したのが、さいたま市浦和区の店主たちだ。浦和はかつて沼地や川が多く、宿場町だったこともあってウナギ料理が盛ん。14年7月に有志で「日本のうなぎを育てる会」を結成し、会長には創業79年の老舗「中村家」店主の大森好晴さん(73)が就いた。