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【経済】「爆買い」東北素通り 春節でも 中国で知名度不足
中国人観光客らが大量の日本製品を購入する「爆買い」の恩恵が、東北地方に届いていない。観光地としての知名度不足に加え、あと一カ月で五年がたつ東日本大震災の記憶が残っているためだ。中国経済の減速で若干の陰りはあるものの日本列島各地は春節(旧正月、今年は二月八日)の連休で訪れた中国人観光客で沸いている。だが、東北の客足はふるわない。出遅れを取り戻そうと、官民を挙げた誘客が続く。 (小野谷公宏) 「当店は免税店です」。ドラッグストアが横断幕を掲げる仙台市中心部。中国からの団体客は見かけない。東北最大手の百貨店「藤崎」では、中国人の親子がランドセルやおもちゃを品定めしていた。市内の中国系企業に勤める母親(36)は昨年から単身赴任中で、春節に合わせて来日した娘(9つ)と足を運んだ。母親は「買い物目当てならブランド品がそろう東京に行くのでしょう」と話す。 東京の三越銀座店は店舗売り上げのうち免税分が25%程度を占めるが、系列の仙台三越では0・2%。営業統括部の遠藤弘子マネジャー(57)は「春節でも街の風景はいつもと変わりません」と嘆く。 「(他の地域に比べて)周回遅れの状況だ」。仙台市国際プロモーション課の橋浦潮課長(43)は危機感を持つ。 二〇一五年の外国人観光客の消費額は前年比71・5%増の約三兆四千七百七十億円。今や爆買いは日本経済を潤している。ただ、東北は約二百八十億円で全体のわずか0・8%と、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは推計する。二兆円に迫る関東はもちろん、二千億円に近づく中部との開きも大きい。 三菱UFJリサーチの推計では、一五年に東北を訪れた外国人観光客は約三十四万人と、ようやく震災前の一〇年(約二十八万人)を上回った。それでも中国からの誘客が伸び悩む。 東北は自然も食も豊かなのに「魅力がほとんど知られていない」と、日本政府観光局の伊地知英己・北京事務所長(46)は指摘する。仙台に住む中国人ボランティアガイドの張延輝さん(38)は「仙台と聞いても中国人はピンとこない」と話す。しかも福島第一原発事故の影響を気にする人が依然いるほか、「地震が怖いとの印象が根強い」と中国系航空会社の社員はみる。 そこで仙台市は一〜三月、中国人観光客に名所を巡る市バスの一日乗車券を贈るキャンペーンを初めて展開中だ。官民組織「東北観光推進機構」の油川晋司本部長代理(47)は「各県と連携して認知度を上げたい」。力を入れるのは、広域観光ルートづくりや、海外PRの強化。東北が一丸となることが成否の鍵を握る。 PR情報
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