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石炭火力の容認 CO2は削減できるのか

 温暖化対策に逆行するとして、相次ぐ石炭火力発電所の新設計画に待ったをかけていた環境省が、一転して新設を容認することになった。経済産業省と連携し、電力業界に対する管理を強化するという。

     しかし、管理強化策がどこまで実効性を持つかは不透明で、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を削減できるのか疑問がある。

     政府は昨年、「2030年までに13年比で26%減」とする温室効果ガスの新たな削減目標を決めた。その前提として、総発電電力量に占める石炭火力の比率を現在の30%から26%に下げることにした。石炭火力は最新鋭でも、天然ガス火力の約2倍のCO2を排出するからだ。

     だが、原発停止や電力小売り自由化を背景に、燃料費が安い石炭火力の新設計画が相次ぎ、政府の削減目標達成が危うくなった。このため環境省は、環境影響評価法に基づき、新設計画に異議を唱えてきた。

     環境省と経産省が合意した管理強化策では、石炭を含む火力発電の効率に数値目標を定め、効率の悪い発電所の廃止を促す。さらに、小売事業者に対しては、30年までに原発と再生可能エネルギーの比率を計44%にするよう求める。このため、省エネ法とエネルギー供給構造高度化法の告示を近く改正する。

     また、大手電力や新規参入する電力事業者(新電力)は共同し、政府の目標に沿って各社の排出削減計画を管理する新団体を設立した。

     これらの仕組みが機能すれば、CO2の排出抑制に向け、一定の効果は期待できるだろう。しかし、省エネ法の告示には、効率の悪い既存の発電所を直ちに廃止させる強制力はない。電力業界の取り組みも、あくまで自主的なものだ。

     環境省は経産省から電力業界の対応状況の報告を受ける。不十分であれば、火力発電のCO2排出量に上限を定め、事業者間で排出枠を売買する排出量取引や、排出量に応じた賦課金の導入を検討すべきだ。

     昨年末、国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定では、今世紀後半の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標が掲げられている。

     今回の石炭火力の管理強化策は30年の目標達成に向けたものだ。今世紀後半の実質ゼロを目指すには、一層の削減が求められる。だが、石炭火力発電所は通常、稼働開始から40年程度は使われる。相次ぐ新設計画の容認は、将来の削減対策の足かせにもなりかねない。

     東京電力福島第1原発事故を経験した日本は、原発や石炭頼みに陥らず、省エネや再生エネの拡大で低炭素社会の実現に取り組みたい。

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