浮世絵だけじゃない!江戸時代の傑作絵画が想像以上で驚がくする|厳選42枚

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江戸時代は、浮世絵以外にもバラエティ豊かな絵画芸術が花開きました。数百年たった今でも衝撃的。斬新で美麗の傑作絵画42枚をまとめました。もちろん傑作浮世絵も紹介します。

古今無双のクールな鶏


『動植綵絵(どうしょくさいえ)』より「南天雄鶏図」(伊藤若冲 画)
『動植綵絵(どうしょくさいえ)』より「南天雄鶏図」 1765年
真っ赤な南天の木をバックに、真っ黒な軍鶏が雄雄しくポーズを決めています。黒と赤の配色がとにかくカッコイイ。見ていると気合が入ります。軍鶏の羽の繊細さも見所。

作者は、江戸時代中期に京で活躍し、昨今「奇想の天才絵師」として大人気の絵師伊藤若冲(じゃくちゅう)です。では、まずは多彩で幻想的な若冲ワールドからご紹介。

神々しき白


『動植綵絵(どうしょくさいえ)』より「老松白鳳図(ろうしょうはくほうず)」(伊藤若冲 画)
『動植綵絵(どうしょくさいえ)』より「老松白鳳図(ろうしょうはくほうず)」 1765~66年頃
さきほどの鶏と同じく若冲の代表的シリーズ『動植綵絵』のなかの1枚。伝説の霊鳥・鳳凰が旭日に向かい羽を広げています。どうですか、この白の神々しさと繊細さ。それに尾端はまるでハート。神聖な印象と同時に妙なエロティックさも感じさせます。

『動植綵絵(どうしょくさいえ)』より「老松白鳳図(ろうしょうはくほうず)」(伊藤若冲 画)における鳳凰の眼差し
秀逸なのは鳳凰のこの眼差し!

ひょうきんな虎(足ぺろぺろ)


虎図(伊藤若冲 画)
『虎図』 18世紀後半
ぜんぜん猛々しくない虎。むしろカワイイ。肉球もむっちむちです。ちなみに、本物の虎は見れないので李龍眠作といわれる「虎図」を模写したそう。若冲さん、どうしても虎が描きたかったみたいです。

虎図(伊藤若冲 画)における虎の顔
よく見ると毛の1本1本が墨で描かれています。舌のザラザラも。

コロコロのモフモフ


百犬図(伊藤若冲 画)
『百犬図』 1800年
画面いっぱいに描かれているのはコロコロでモフモフの子犬たち。わんわんパラダイス。タイトルは『百犬図』ですが実際は59匹。

百犬図(伊藤若冲 画)のピックアップ
表情豊かな子犬たち。最晩年の作品ですが、いささかも筆の衰えを感じさせません。むしろ冴えて澄んでいます。

シンプル&大迫力


象図(伊藤若冲 画)
『象図』 18世紀後半
みっちみちに象が詰め込まれています。いや、狭いところから出ようとしているのか? シンプルな線だけでこんな大迫力の象を描く若冲、やはり奇才です。

オシャレなしゃれこうべ


髑髏図(伊藤若冲 画)
『髑髏図』 18世紀後半
このままTシャツにできそうなデザインです。不気味な髑髏がなんだかユーモラスなのは若冲ならでは。

見ているだけで幸せ気分


伏見人形図(伊藤若冲 画)
『伏見人形図』 1800年
若冲、最晩年の作。描かれているのは布袋さまの伏見人形。コロコロという足音が聞えてきそうです。




さて、お次は曾我蕭白(そがしょうはく)。
こちらも近年大人気の「奇想の絵師」で、若冲と同時代に活躍しました。当時からその作品は「狂気」と評され、本人も相当に変わり者だったようです。

ハンパない眼力にくぎづけ


『雲竜図』部分(曾我蕭白 画)
『雲竜図』部分 1763年
水墨画とは思えない圧倒的な迫力。でも、じっくり見ているとなんだかユーモラスな感じも。奥深き蕭白マジック。

雲竜図(曾我蕭白 画)

こちらの『雲龍図』は全8面で横の長さ1080cmという超大作。波のようにうねる雲の表現もすごい。これを描いたのが34歳の時というからまたびっくり。

サイケデリックときどきグロテスク


群仙図屏風 右隻(曾我蕭白 画)
群仙図屏風 右隻(曾我蕭白 画)
『群仙図屏風』 1764年
ひと言で言えば「異様」。もうひと言くわえるなら「どぎつい」。赤、黄、青、白の原色が生み出すサイケデリックさ、描かれた人物たちの表情の奇怪さ、すべてが相まってものすごいインパクト。一度見たら忘れられない、いや、クセになる。

群仙図屏風 左隻(曾我蕭白 画)ピックアップ

美女に耳かきしてもらう仙人。仙人とは思えないイヤラシイ表情。頭の上になんか乗ってますよ! か、かえる!?

群仙図屏風 右隻(曾我蕭白 画)ピックアップ

風になびく袖の表現が常軌を逸してます。とんでもない発想力です。

ぶっとんだ色彩センス


雪山童子図(曾我蕭白 画)
『雪山童子図(せっせんどうじず)』 1764年頃
描かれているのはお釈迦さまの前世の物語。つまり宗教画です。しかし、宗教画がこんなにエキセントリックでいいんでしょうか!? こんな青々した青鬼、見たことありません。



次は長沢芦雪(ながさわろせつ)。
若冲、蕭白と同時代の絵師で「奇想の画家」のひとり。自由奔放、奇抜でユニークな作風で知られる芦雪は、本人もまた自由奔放だったとか。

虎なのに猫のような愛らしさ


虎図(長沢芦雪 画)
『虎図』 1786年
芦雪の代表的な作品。今にも飛び掛らんばらりの体勢で鋭い目つきの虎ながら、丸顔のせいか、くるんと丸くなったシッポのせいか……なんだかとっても愛らしい。

虎図(長沢芦雪 画)ピックアップ
ピンと張ったひげ。虎の緊張感がびしびし伝わります。でもやっぱりどこかカワイイ。

虎、完全に猫となる(ゴロゴロ)


四睡図(長沢芦雪 画)
『四睡図(しすいず)』 18世紀後半
虎にもたれてのんびりお昼寝中。なんという至福の表情。虎もぜんぜんイヤそうじゃありません。むしろニコニコ。足まであげて無防備です。見ているこちらまでほんわかしてくるいい絵ですね~。描かれているのは唐の伝説的な変わり者の僧・寒山(かんざん)と拾得(じっとく)、それにその師といわれる豊干(ぶかん)禅師。豊干は虎好きで虎の背に乗ってたとか。どうりで仲良しなはずです。ちなみに、「四睡図」は豊干、寒山、拾得が虎と寝ている場面を描いたもので、禅画の代表的な画題のひとつ。それだけにどうやって描くかは画家の腕と個性の見せ所となっています。

ワンコのかわいさがヤバイ


一笑図(長沢芦雪 画)
『一笑図』 18世紀後半
子どもとワンコがコロコロと遊んでいます。子どものおまたからバァと顔を出したり転がったりと自由気まま。あ、連れ戻されたワンコも。ちなみに『一笑図』というのは、「竹」と「犬」を組み合わせて「笑」になるというおめでたい画題。

一笑図(長沢芦雪 画)ピックアップ
おじさん座りしてます。舌がペロしてます。なんですかね、この、ゆるカワイイ生き物……。




次は、白隠慧鶴(はくいんえかく)。
江戸時代中期の禅僧です。「500年に1人の英傑」と讃えられたスゴイお坊さんですが、禅の教えを説くために描いた絵が非常に個性的。たとえばこんな感じ。

バランス無視の問答無用さ


『半身達磨』通称「朱達磨」(白隠慧鶴 画)
『半身達磨』通称「朱達磨」 1764~69年
暗闇からヌっと現れたのはギョロ目の達磨大師。見る者の心を見透かすようなするどい眼光がインパクト大。写実性とはかけ離れた絵ですが、それだけに有無を言わせぬ迫力があります。大きさはなんと2m近くあるという巨大な絵で、80歳を超えてこれを描いたというから驚き。ちなみに左上には「直指人心(じきしにんしん) 見性成佛(けんしょうじょうぶつ)」という禅語が。おおまかな意味は「自分の心にこそ仏が宿り、それを自覚することで仏になる」。

キセルを吹いたらお多福が出た


布袋吹於福(白隠慧鶴 画)
『布袋吹於福(ほていすいおふく)』 18世紀後半
これまたじつにユニークな作品です。キセルを手にしたニコニコ(ニヤニヤ?)顔の布袋さまが煙を噴出すと……なんとお多福が出ました。お多福も今でいう「ぶちゃカワ」で愛嬌たっぷり。ちょっと解説しますと、この布袋さまは白隠さん自身だそう。お多福は白隠作品にしばしば登場するモチーフで、美醜の判断を超え人々に幸福をもたらす存在らしい。つまりこの絵には、人々の福寿を願う白隠さんの祈りが込められているのだとか。



次は喜多川歌麿
美人画で一世を風靡した浮世絵師で、海外ファンも多し。

なんだかポップ


当時全盛美人揃「玉屋内小紫」(喜多川歌麿 画)
『当時全盛美人揃』「玉屋内小紫」 1794年
ゆったりと構えた美しい遊女が色っぽいですね~。なんといっても色使いが絶妙。背景の黄色、着物の淡いピンクとちょっとくすんだ青、帯の渋い緑……すべてが合わさるとなんともポップな印象に。まるでポスターみたいです。



次は歌舞妓堂艶鏡(かぶきどうえんきょう)。
かなりマイナーな浮世絵師。それもそのはずで、活動期間はわずか1年、確認されている作品も7点のみという少なさ。なんだか写楽を彷彿とさせます。おもしろいのは写楽が消えた1年後に突如デビューし同じように消えたこと。写楽と同一人物では?なんて説もありました。では貴重な歌舞妓堂の役者絵をどうぞ。

とんでもなくイケメン


三代目市川八百蔵の梅王丸(歌舞妓堂艶鏡 画)
『三代目市川八百蔵の梅王丸』 1795~96年
こんな現代に通じるイケメン浮世絵、見たことありません。ポーズもかっちょいい! 昭和の銀幕スターのような正統派イケメンです。描かれているのは名作歌舞伎『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』に登場する梅王丸を演じる三代目市川八百蔵。



イケメン浮世絵つながりで、次は歌川国政(くにまさ)。
江戸時代後期に活躍した浮世絵師ですがこちらもマイナー系。ものすごい傑作を描いたかと思えば凡作も多い“ムラ”の多い絵師。

八百蔵はイケメン(確信)


三代目市川八百蔵の梅王丸(歌川国政 画)
『三代目市川八百蔵の梅王丸』 1796年
さきほどのイケメン浮世絵と匹敵するイケメンっぷり。じつは描かれているのは同じ人物。こちらの方がちょっとシャープで今時な感じ。赤と黒のコントラストもかっこいい。特に見得(みえ)を切るこの目!

大胆デザイン


『市川鰕蔵(えびぞう)、碓井荒太郎定光に扮しての暫(しばらく)』(歌川国政 画)
『市川鰕蔵(えびぞう)、碓井荒太郎定光に扮しての暫(しばらく)』 18世紀末
一瞬なにが描かれているかわからなくなりそうなほど大胆なデザイン。横顔の役者絵、という大胆さ。描かれているのは五代市川団十郎こと市川鰕蔵で、手前にあるのは市川家の定紋である「三枡文(みますもん)」をあしらった暫の衣装の袖。三枡文の直線的なデザインと、顔の隈取の曲線があいまって非常に躍動感があります。

流れる髪の色っぽさ


市川男女蔵〈みどりや松蔵の役か〉(歌川国政 画)
市川男女蔵〈みどりや松蔵の役か〉 18世紀末?
乱れ髪。着物の柄と髪の毛の流れの相乗効果で色気があります。描かれているのは歌舞伎役者の市川男女蔵(おめぞう)。



次は歌川国芳(くによし)。幕末に活躍した奇才の絵師で、変幻自在の作風は唯一無二。大の猫好きとしても有名。

国芳版ガリバー旅行記


『朝比奈小人嶋遊(あさひなこびとじまあそび)』(歌川国芳 画)
『朝比奈小人嶋遊(あさひなこびとじまあそび)』 1847年頃
ムッチムチの巨漢がニコニコしながら横たわってます。その視線の先には……ちっこい人がいっぱい! 小人の大名行列です。それにしてもいい笑顔。

虎VS加藤清正


『本朝水滸傳剛勇八百人一個』「膳臣巴提使(かしわでのおみはてび)」(歌川国芳 画)
『本朝水滸傳剛勇八百人一個』「膳臣巴提使(かしわでのおみはてび)」 1830~32年頃
勝つのは虎か猛将加藤清正か!? 画面から荒々しい呼気が聞えてきそうな大迫力。武者絵を得意とした国芳の真骨頂。

降ってきたのは……あめんぼう!?


『金魚づくし』「にはかあめんぼう」(歌川国芳 画)
『金魚づくし』「にはかあめんぼう」 1839年頃
突然のにわか雨ならぬ“にわかあめんぼう”に慌てふためく金魚たち。ある金魚は水草の傘をさし、ある金魚は自分の尾で雨をしのぐ。か、かわいすぎる。金魚を擬人化した『金魚づくし』シリーズはどれもかわいさMAX。

歌川国芳の浮世絵は幕末の浮世絵特集でも紹介していますので、そちらもどうぞ。




次は歌川国貞(くにさだ)。三代歌川豊国としても知られる江戸時代後期のナンバーワン売れっ子絵師です。22歳でデビューし79歳で没するまでじつに現役生活57年、数万点ともいわれる膨大な作品を世に送り出しました。

完全に少女マンガの王子キャラ


『御誂(おあつらえ)三段ぼかし』(歌川国貞 画)
『御誂(おあつらえ)三段ぼかし』「浮世伊之助」「葉歌乃新」「野晒語助」「夢乃市郎兵衛」「紅の甚三」「提婆乃仁三」 1859年
イケメンが花を背負ってます。しかもパステルです。なんだかキラキラしてます。「これが江戸時代?」と目を疑ってしまいますが、れっきとした江戸時代の作品です。デザインにもこだわりのあった国貞、そのセンスは今見てもオシャレで斬新。ちなみに描かれているのは当時の歌舞伎界のトップスターたちです。

はしる閃光、飛び散る岩石


『豊国揮毫奇術競(とよくにきごうきじゅつくらべ)』「蒙雲国師(もううんこくし)」(歌川国貞 画)
『豊国揮毫奇術競(とよくにきごうきじゅつくらべ)』「蒙雲国師(もううんこくし)」 1863年
漫画のような集中線が江戸時代にあったことに驚き。そして、エキセントリックすぎる。以前もとても150年前とは思えない浮世絵を紹介しましたが、これもまさにそんな感じ。描かれているのは小説『椿説弓張月』に登場する妖術使いの怪僧・蒙雲国師。

朝日だってビカーっ!!


二見浦曙の図(歌川国貞 画)
『二見浦曙の図』 1827~31年頃
やっぱり、まぶしー!こんな日の出の表現がすでにあったなんて驚愕です。よく見るとちゃんと海にも反射しているんですよね。

まるで映画のオープニングシーン


『東海道』「日本橋」(歌川国貞 画)
『東海道』「日本橋」 19世紀?
お江戸日本橋が大胆に真正面から描かれているのが新鮮。向こうからは大名行列が近づいてきており、橋のたもとの人々が慌てて道を空けようとしています。映画のオープニングシーンのような臨場感にあふれていますね~。



背景デザインならこちらも負けていません。次は豊原国周(とよはらくにちか)。幕末の浮世絵師で「明治の写楽」ともいわれました。住居と妻を変えるのが癖、というかなり変わった人。

背景がオシャレすぎる


『江戸の花若手五人揃』「御祭佐七 坂東彦三郎」(豊原国周 画)
『江戸の花若手五人揃』「御祭佐七 坂東彦三郎」 1864年
なにこの背景。幾何学模様でまるでモザイクみたい。江戸時代にこんなデザインセンスを持った人がいたことに驚きです。

まるで『NARUTO』


『五代目尾上菊五郎の天竺徳兵衛』(豊原国周 画)
『五代目尾上菊五郎の天竺徳兵衛』 1891年
この画のみ明治時代ですが、国周作品としてせっかくなので紹介。妖術使い・天竺徳兵衛が召還したのは巨大ガマ! どろろ~ん!! いやもう完全に『NARUTO』の世界観です。忍術大戦です。ちなみにこれは歌舞伎の舞台絵です。



次は勝川春章(かつかわしゅんしょう)。多くの弟子を育て「勝川派」と呼ばれる一派を築いた江戸時代中期を代表する絵師です。かの葛飾北斎も若い頃に弟子入りしていました。

妖艶すぎる美女たち


『読書手習美人図』(勝川春章 画)
『読書手習美人図』 18世紀
美人画で正面からモデルを描いたものっていうのがまず珍しい。なんか新鮮。それにしても色っぽい。透き通るような肌の白さ、そして「透け感」がたまらない。薄い着物から女性のいかにも柔らかそうな腕が透けていて色っぽさ倍増。肉筆美人画を得意とした春章の筆が冴えまくっています。

ゆるキャラ風どくろ


『岩井半四郎と市川団十郎』(勝川春章 画)
『岩井半四郎と市川団十郎』 18世紀
全身タイツみたいなドクロ、まったく怖くない。いや、むしろカワイイ。右のいかにも浮世絵っぽい女性と比較するとコラ画像みたいです。

昼と夜を同時に描くというビックリ発想


「ふみ月 たなばた 草市」(勝川春章 画)
「ふみ月 たなばた 草市」 18世紀
画面が斜めの線で分割されています。なんと昼と夜を1枚に描いてしまっているのです。マンガのコマ割りみたいですね。ちなみにこれは12ヵ月のさまざまな行事を昼と夜に分けて描くというシリーズのうちの1枚で、7月(文月)の行事である七夕(右上)と草市(左下)が描かれています。満天の星空、屋根に飾られた七夕飾りがたなびいています。



師弟つながりで次は葛飾北斎。世界で最も有名な日本人画家といっても過言ではないでしょう。生涯を絵の探求の捧げ自ら「画狂老人」と名乗った天才で、その作品のすごさは時代を超えて人々に驚きを与え続けています。

滝は生きている


『諸国滝廻り』「下野黒髪山きりふりの滝」(葛飾北斎 画)
『諸国滝廻り』「下野黒髪山きりふりの滝」 1833年頃
まるで命あるもののようにうねる滝。木の根っこのようにも血管のようにも見えます。『諸国滝廻り』は全国の名瀑を描いたシリーズですが、どれも北斎にしか描けない滝の表現がインパクト大。

大胆かつ洗練された北斎デザイン


「四姓ノ内 源 小烏丸の一腰」(葛飾北斎 画)
「四姓ノ内 源 小烏丸の一腰」 1822年頃
朱色も鮮やかな太刀をガッシとつかんで鴉が飛んでいます。下からのアングルというのが憎いですね。写実的な梅の描写とデフォルメされた鴉の対比もじつにユニーク。

天駆ける虎


雪中虎図(葛飾北斎 画)
『雪中虎図』 1849年頃
北斎の最晩年の作品。これを88歳の老人が描いたなんて信じられません。虎の表現はリアルとかリアルじゃないとかそういったものを超越して、ただただ「すごい」のひと言。

北斎の絵は晩年の北斎画を特集した記事でも紹介していますので、そちらもどうぞ。



次は葛飾応為(おうい)。近年その名を広く知られるようになった女性絵師で、葛飾北斎の娘です。「蛙の子は蛙」ならぬ「天才の子は天才」。残された作品は少ないですが、応為の常人離れしたセンスを感じさせます。

闇と光が織りなす幽玄世界


『夜桜美人図』(葛飾応為 画)
『夜桜美人図』 19世紀中頃
暗闇のなか、灯篭の灯りが照らし出す女性の白い顔と淡いピンクの桜。匂い立つような妖艶で幻想的な空間です。思わずため息がもれてしまいますね~。




次は歌川広重。いわずと知れた日本を代表する浮世絵師で、世界的にもその評価は抜群。斬新で独創的なアングルの風景画で大人気となり、北斎の人気を奪うほどだったとか。

波の表現が尋常じゃない


『不二三十六景』「相模七里ヶ浜風波」(歌川広重 画)
『不二三十六景』「相模七里ヶ浜風波」 1852年
広重さん、斬新すぎです。なんですかこの波。粘度が高そうです。正面にどっしり構える富士山との対比がおもしろいですね。

メインモチーフが尋常じゃない


『名所江戸百景』「内藤新宿」(歌川広重 画)
『名所江戸百景』「内藤新宿」 1857年
絵のメインが馬の尻という普通じゃない感。これは広重の代表的シリーズ『名所江戸百景』のなかの1枚です。ユニークな構図が多い同シリーズのなかでも特にユニーク。なにせ馬の尻です。ちゃんと馬糞も落ちてます。

あれ!?猫村さんがいる


『猫の化粧』(歌川広重 画)
『猫の化粧』 19世紀中頃?
どっからどう見ても『今日の猫村さん』です。猫が糠袋(ぬかぶくろ)=江戸時代の洗顔料で顔を洗っています。表情がかわいすぎます。それにしても江戸時代の絵師は猫好きが多いですね~。

鷹の目による鳥瞰


深川洲崎十万坪(歌川広重 画)
『深川洲崎十万坪』 1857年
歌川広重作の大ヒットシリーズ『名所江戸百景』のなかでも、もっとも印象深い。斬新な構図は160年後の現代でも新しい。



次は司馬江漢。江戸時代後期の絵師蘭学者です。お友だちには大天才大奇人平賀源内がいます。“類友”で江漢も多才にしてかなり変わった人だったもよう。

これも江戸時代の作品


『七里ヶ浜図』(司馬江漢 画)
『七里ヶ浜図』 18世紀後半?
コバルトブルーの海がきれい。中央に江ノ島、その向こうには富士山も見えます。色合いといいタッチといい江戸時代の作品とは思えません。じつはこれ油絵なんです。司馬江漢は独学で油絵を描き西洋画の先駆者のひとりとなりました。



最後は鈴木其一(きいつ)。「最後の琳派」といわれる江戸時代後期の絵師で、近年人気急上昇中。琳派といえば本阿弥光悦や俵屋宗達を祖にし、金色が印象的な絢爛豪華な屏風絵でおなじみですが、其一は伝統的な琳派に独自のセンスを加えモダンな作風を確立しました。

鮮烈な青


『朝顔図屏風』(鈴木基一 画)
『朝顔図屏風』 19世紀
其一の代表作。金地に目にも鮮やかな朝顔の青、生命力を感じさせる葉の緑、花の中心の白……それらが相まってなんともモダンな印象を受けます。リズミカルに咲き乱れる朝顔とうねるような蔦はまるで生き物のようです。うっとり。

見たことのない新世界


『夏秋渓流図屏風』(鈴木基一 画)
『夏秋渓流図屏風』 19世紀
こちらも渓流の青が鮮烈。音を感じさせない金地の背景と対照的に、生命力あふれる木々と渓流は画面から浮かび上がって見えます。流れる水の音まで聞えてきそうです。其一の作品はエッジがきいていて五感が刺激されます。

今回は江戸時代の絵画について紹介しました!以下の幕末浮世絵、絵画特集もおすすめです!


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