元プロ野球選手の清原和博容疑者が、覚醒剤取締法違反(所持)容疑で逮捕されて、きのうで10日がたった。

 どうやって誰から入手したのか。いつから使っていたのか。今もわからない点が多い。

 自分で使うために薬物を持っていたことは認めており、尿検査で陽性反応が出たとされる。北関東方面にしきりに足を運んでいたとの報道もある。

 容疑が事実ならば、清原容疑者はすべてを明らかにし、捜査に全面協力すべきだ。社会に深く広まっているといわれる薬物汚染を食い止めるためにも、事件の全容解明が必要だ。

 覚醒剤犯罪は、暴力団関係者がかかわっていることが多い。今回の背後関係がどうであれ、プロ野球界は反社会的勢力との関係を断つ取りくみが甘かったといわざるを得ない。

 清原容疑者は99年、暴力団関係者とゴルフをしていたことがわかった。金銭も要求されるような事態だったが、巨人は厳重注意処分にしただけだった。

 同じ年に巨人のコーチが暴力団と関係のある企業に役員として名を連ねていた事実も発覚した。しかし、球団が下した謹慎処分はほどなく解かれた。

 巨人に限らず、プロ球界全体に身を律する努力が足らない。そんな指摘が続いた中で、日本野球機構などは、選手、監督、コーチらと暴力団を接触させないなどの「暴力団等排除宣言」を03年に出した。

 だがその後も、確固たる姿勢で臨んでいたとは言い難い。

 巨人の原辰徳前監督が元暴力団員らから1億円をゆすり取られたと週刊誌が報じたのは4年前だ。当時のコミッショナーは事実関係さえ調べなかった。

 反社会的な人脈との交際や、法令やルール違反を、大小問わず一切見逃さない。そんな厳格な意識がプロ球界に必要だ。

 薬物使用という点では、覚醒剤ではなくとも、スポーツ競技で禁じられているドーピングの問題もある。

 その検査制度をプロ野球は07年から罰則を伴い本格導入した。だが、1回に1選手を調べる検査数は14年が107、15年が128。チーム数、選手数を考えれば十分とはいえまい。

 現役時代にドーピングを許さない姿勢を徹底することは、現役だけでなく、引退したあとも違法薬物に手を出さない意識を培うことに役立つだろう。

 反社会的勢力との交際への厳然とした態度と、反ドーピングへの一層の取りくみで、プロ球界全体の健全さと順法意識を高めるべきだ。