[FT]中国など外貨準備急減、介入の限界試す関係国

　市場混乱の多くは、通貨や中央銀行とアグレッシブな投資家の対決から広がる。

　最近盛んに論じられている問題は、中国やサウジアラビアなどの国が通貨を著しい価値の下落から救うためにいつまで外貨準備に頼り続けることができるかということだ。

　世界経済がさらに減速の様相を呈し、商品価格の下落が多くの国々の予算に穴を開ける中、投資家たちは通貨がさらに大きく下落し、サウジアラビアのドルペッグ制が終わることに賭けている。

画像の拡大

中国政府当局は４日、外貨準備は潤沢だとした＝ロイター

　トレーダーと中央銀行のどちらが勝つのかはアナリストの間で意見が分かれるところだ。だが、各国は現状の為替水準を維持するために外貨準備を消耗し続けており、ビル・アックマン氏や多くのヘッジファンドはこの戦略はいつまでも続けられるものではないと見ている。

　外貨準備の使途は主に２つある。野村の外国為替ストラテジスト、チャールズ・セントアルノー氏は「リーマン・ショック」のような万が一の場合に備えて外貨準備を積み上げることで「通貨の流れを改善して市場の流動性を確保する」目的があると言う。

　もう一つの目的は、国の経済的なファンダメンタルズ（基礎的条件）と通貨水準のギャップを埋めることだ。

　セントアルノー氏は「何と戦おうとしているかによる」とした上で「これまで各国中銀はそれなりの額の外貨準備を使用してきたが、ファンダメンタルズのかじ取りは難しいのが現状だ」と話す。

　外貨準備を機能させようとする上での問題は、使用側（中銀）に対する市場の信頼が揺らぐことだ。

　ソシエテ・ジェネラルのキット・ジュークス氏は「もしこれが結局のところ使えない力強さの象徴だとしたら、見かけ倒しのよろいと同じだ」と語った。

　ニュー・スパルタ・アセット・マネジメントのウスメーヌ・マンダン氏は、各国は強い立場の時に外貨準備を蓄積するが、「今、弱い立場での使用を渋っている」と言う。「自国を弱いとする市場の見方を認めるようなことはしたくないものだ」

■外貨準備を大幅に減らす中国とサウジ

　世界の外貨準備の３分の１を保有する中国は18カ月間で8000億ドル近くを使い切った。また、原油安でサウジアラビアは外貨準備に手を付けざるをえなくなった。

　新興国市場にとって、外貨準備蓄積の時代は中国を筆頭に陰りが見え始めた。中国がこのペースで外貨を消耗し続けたら、年末までに世界の準備残高は10兆ドルに減少し、ピークだった2015年の額を４兆ドルという「驚くべき」規模で下回る可能性もあるとドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏は言う。