シリア停戦呼びかけに世界主要国が合意
- 2016年02月12日
シリア和平をドイツ・ミュンヘンで協議していた米ロや欧州、中東など「国際シリア支援グループ」(ISSG)の各国が11日、「1週間以内の停戦」呼びかけで合意した。過激派勢力「イスラム国」(IS)とヌスラ戦線に対する掃討作戦は停戦対象に含まれない。各国代表は、人道支援の拡大と迅速化も約束した。
この間、ロシア空軍が支援するシリア政府軍のアレッポ進攻は続き、反政府勢力支配地域の住民数万人が包囲され身動きがとれなくなる恐れが高まっている。
ISSGに参加する米国のケリー国務長官は、停戦計画は「意欲的」なものだと認め、当事者の各勢力が実際に約束を守るかどうかが試されると述べた。
「ここにあるのは紙の上の言葉のみだ。これから数日中に、実際に現地で行動に移さなくてはならない」
米ロ主導の作業チームが今後、シリアで対立する各勢力と協議し、停戦合意の実施を目指す。
包囲下にある地域への援助物資は、早ければ12日から届き始める見通しだ。
ケリー長官は、ロシアのラブロフ外相、国連のシリア問題担当デミストゥラ特使と共に記者会見に出席し、停戦呼びかけを発表した。
ラブロフ外相は、「本日、大きな成果を出せたと期待するだけの根拠がある」と述べた。ロシアはこれまで、3月1日の停戦開始を提案していた。
記者会見でケリー長官はあらためて、ロシア軍が空爆している標的はロシア政府が言うテロリストではなく、西側が穏健的とみている反政府勢力だと指摘した。
ハモンド英外相は、ロシアが空爆を停止しなければ停戦は成功しないと釘を刺したが、ラブロフ外相は継続すると述べた。
ISSGはさらに、シリア政府と反政府勢力の和平協議をできるだけ速やかに再開すべきだと合意した。
ジュネーブで1月末に始まったばかりの和平協議は今月3日、シリア政府軍のアレッポ進攻のため中断されたままだ。
アレッポ進攻によって数万人が避難し、トルコ国境で足止めされている。人道支援団体は、国境周辺に集まった人たちの置かれた状況が日に日に悪化しており、人道危機が拡大していると警告する。
シリアの反政府勢力のサレム・アルメスレト氏はBBCに対して、「現地で実際に行動と履行がみられれば、間もなくジュネーブに集まる」と述べた。
<シリア内戦とは>
なぜシリアで戦っているのか
政府への抗議行動が内戦へと発展し、4年以上たって膠着状態に陥っている。アサド政権、「イスラム国」、複数の反政府勢力やクルド系勢力が、それぞれに支配地域をもつようになった。
誰が誰と戦っているのか
首都ダマスカスと国内中部、西部に集中する政府軍が、「イスラム国」やヌスラ戦線の過激派勢力と戦うほか、北部や東部で勢いのある複数のいわゆる「穏健派」反政府勢力と戦っている。アサド政権に対抗する各勢力はそれぞれお互いとも戦っている。
世界の反応は
イランとロシア、レバノンのヒズボラはいずれも、シリア人口の約1割にあたる「アラウィ派」が主流のアサド政権を支持。一方で、トルコ、サウジアラビア、カタールなどは米英仏と共に、スンニ派が中心となった反政府勢力を支持している。ヒズボラとイランは、地上部隊や将校を派兵しているとみられており、米軍主導の欧米連合とロシアはそれぞれ別個に空爆作戦を展開している。
(英語記事 Syria conflict: World powers agree cessation of hostilities)