きょうのコラム『時鐘』
運動会(うんどうかい)の「ピラミッド」は、どうなるのだろう。大阪市教委(おおさかしきょうい)が決(き)めたという禁止(きんし)の方(ほう)針(しん)が、広(ひろ)がっていくのだろうか
四(よ)つん這(ば)いになって4段(だん)、5段と重(かさ)なる組(く)み体操(たいそう)には、楽(たの)しい思(おも)い出(で)がある。目(め)立(だ)つのは、てっぺんでポーズを決(き)めるヤツだが、仲間内(なかまうち)で尊敬(そんけい)されたのは一番下(いちばんした)の土台(どだい)役(やく)。城(しろ)の石垣(いしがき)みたいに、一人(ひとり)だらしないのがいると、ピラミッドは、たちまち崩(くず)れる
だらしないのは、仲間から叱(しか)られ、大事(だいじ)な「土台」から上(うえ)へと追(お)いやられた。格好良(かっこうよ)くポーズを決めるてっぺんは、実(じつ)は冴(さ)えない役(やく)回(まわ)り。体(からだ)を鍛(きた)える以上(いじょう)に、集団(しゅうだん)での行動(こうどう)に必(ひつ)要(よう)な別(べつ)の勉強(べんきょう)もした。ピラミッドが崩れるたび、落(お)ち方(かた)、転(ころ)び方も身(み)につけた。痛(いた)い目(め)に遭(あ)った分(ぶん)、本番(ほんばん)での達(たっ)成感(せいかん)は格別(かくべつ)だった
高(こう)校(こう)の体育(たいいく)では柔道(じゅうどう)があった。背負(せお)いや巴投(ともえな)げに憧(あこが)れたが、やらされたのは退屈(たいくつ)な受(う)け身(み)ばかり。すぐにサボり癖(ぐせ)がついた。ピラミッドの練習(れんしゅう)では喜々(きき)として転がったのに、ニキビ面(づら)になったら、みっともないと生意気(なまいき)にも敬(けい)遠(えん)した
だから、ピラミッドの存続(そんぞく)を願(ねが)いたい。受け身「三日坊(みっかぼう)主(ず)」の身(み)で、エラそうなことは言(い)えないが。