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乳幼児の虐待死 連携強めて命を救おう

 虐待によって幼い命が奪われる事件が後を絶たない。

     埼玉県と東京都で先月に起きた事件の被害者はいずれも3歳児だった。無抵抗で体も小さい乳幼児の虐待は死亡につながりやすい。関係機関は全力で対策を講じてほしい。

     埼玉県狭山市では藤本羽月ちゃんが遺体で見つかり、母親(22)と同居の男(24)が逮捕された。2人は自宅マンションで羽月ちゃんの顔に熱湯をかけてやけどを負わせるなどしたうえ、病院に連れて行かずに放置したとされる。

     東京都大田区の新井礼人ちゃんは母親(22)の交際相手の暴力団組員(20)から暴行されて大けがをしたとされる。礼人ちゃんは病院に運ばれたが死亡した。

     いずれの事件も、あまりにむごい。強い憤りを禁じ得ない。

     狭山市では、市の職員は羽月ちゃんや姉が定期的な乳幼児健診を受けていないことから自宅を何度か訪問し、虐待がないかなど様子を確認していた。

     当時、母子は羽月ちゃんの祖母と同居し、祖母に家事を手伝ってもらうなどの支援を受けていた。その後、母子はマンションに移り、逮捕された男と同居中に事件が起きた。

     マンションでは羽月ちゃんが玄関の前に出されていたり、泣き続けていたりするのを近所の人が気づいて警察に2度通報していた。しかし、警察官が訪問した際には虐待の形跡はなかったという。

     通報があったことは狭山市には知らされず、市は母子の転居も把握していなかった。関係機関が情報を共有していれば、家庭への関わりを強められたのではないか。

     大田区の事件では、母親が若い時の妊娠だったため、区は特別の支援が必要な「特定妊婦」として乳幼児健診の時に気をつけていた。だが、組員との同居は把握しておらず、虐待にも気づかなかった。もう一歩関わる方法はなかっただろうか。

     厚生労働省のまとめによると、2003年度から13年度に児童虐待で死亡した582人の中で3歳以下が437人と75%を占めている。うち3歳児は57人、0歳児は最多の256人に上る。

     厚労省の専門委員会が昨年公表した報告書は「虐待のリスクについて妊娠期から着目して支援につなぐことが肝要」と指摘した。

     その場合、妊婦と接する機会が多い産科の医療機関が果たす役割も大きい。母親本人や家庭の状況から虐待の危険性を察して児童相談所や市町村へ連絡し、出生後のケアを引き継ぐことができるからだ。

     妊娠期から家庭へ継続的な対応ができる体制を整えるとともに、関係機関が連携を強化する必要がある。

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