医療サービスの公定価格にあたる診療報酬の2年に1度の改定内容が決まった。4月から実施される。

 今回、大きな柱の一つが、患者の状態に即した医療を提供するために医療機関の役割分担を明確にすることだ。

 例えば、看護師の配置が手厚い重症患者向けの病院には高い報酬が支払われているが、実際には必要性が薄い患者を受け入れている例もある。重症患者の入院割合などの基準を引き上げて、高い報酬を支払う対象を絞り込む。また、大病院の外来に患者が集中する現状を是正するため、紹介状なしで大病院を受診した場合には原則、診察代と別に最低でも初診で5千円、再診で2500円を支払わなければならなくする。

 もう一つの柱が、薬に関係する見直しだ。患者の服薬指導や管理に取り組む薬局を「かかりつけ薬局」として推進するほか、在宅の患者を薬剤師が訪問し、重複している薬などについて医師に問い合わせる取り組みも後押しする。後発医薬品の使用割合の高い診療所に対する加算なども新たに設け、価格の安い後発品の使用を広げる。

 国民医療費は40兆円を超え、今後さらに増えることが見込まれる。必要な人が必要な医療を得られるようにするためには、限りある資源を効率的に使うことは避けて通れない。その意味で、今回の見直しの方向性と、この改定で厚生労働省が示した医療のあり方は理解ができる。

 しかし、診療報酬さえ変えれば、望ましい医療が実現できる、というものでもない。

 例えば大病院への患者集中の是正は、改定の度に焦点になりながらも改善していない。背景には「身近に良い医院がない」「大病院のほうが安心だ」といった患者側の事情がある。

 そうした課題が残ったままでは、単に患者の負担が増すことになりかねない。患者にとって身近で信頼できる開業医が増えていかないと、大病院志向を変えることはできないだろう。

 欧米では「総合医」「家庭医」を育成・認定する仕組みがある。日本でも「総合診療医」が検討されているが、そうした医師の育成を急ぎ、地域に広げる取り組みが必要ではないか。

 後発医薬品を広げるには、薬を処方する医師と、使う患者からの信頼を高めることが大切だ。突然の製造中止といったことのない安定供給や、安全性に関する情報提供が求められる。

 患者が納得できる医療にするために、診療報酬改定に終わらない患者目線の改革が必要だ。