「みんな目を閉じろ。正直に言えば先生は怒らない。だからもし間違ってイタズラしてしまった者がいたとしたら手をあげてほしい。」
だんだん僕は腹が立ってきた。早く犯人が出て来ればいい。そう思っていた。先生がもう目を開けてもいいと言った時、きっと犯人が見つかったと思った。でも先生は怖い顔のままだ。たぶん犯人はまだ名乗り出ていない。
僕は小学六年生。今日はお泊まり学習の日だった。午前中はみんなでうどんを作った。生地を足で踏む本格的なうどん。僕の友達が生地を足で踏んでいる時に生地を覆っている袋が破けていることに気づいた。だから僕はお昼ご飯をほとんど食べられなかった。最悪だ。朝からずっと最悪だ。みんなでお風呂に入って、これから寝ようとしていたのに、寝ることさえできない。先生は見つけるまで僕たちを寝させてくれないかもしれない。それは事件だった。大事件だ。
僕の友達のパンツが無くなったんだ。
僕たちは全員大広間にいる。持ち物も全部そこにあるし、みんなで寝る場所もそこだ。それこそバックの中を全部ひっくり返して調べた。お風呂場も行った。それでも友達のパンツは見つからなかった。もう誰かがイタズラして隠しているとしか考えられない。でも、そんなことする奴がこのクラスにいるのだろうか。いないと思う。僕たちのクラスはふざけたりする奴もいるけど、みんな仲良しだ。パンツを隠す奴がいるなんて絶対に信じられない。
「誰か間違って穿いてるんじゃないかな…。」
そう言ったのはクラスで一番頭がいい、みんなからは博士と呼ばれている奴だった。先生はさも自分が閃いたかのようにとっても嬉しそうな顔をして、全員自分のパンツを調べろと言った。博士も先生もどうかしている。他人のパンツと自分のパンツの区別がつかない奴がいるわけがない。間違えて穿くタイミングだって無い。僕は面倒くさいのを我慢して自分のパンツを調べた。
犯人は僕だった。
僕はみんなの前で正直に話した後、ふすまの裏に行ってパンツを脱いだ。そして脱ぎたての温もりが残るパンツを友達に手渡した。多少いつもより小さい気がしてた。けど、いつもと違う場所にいるから気のせいだと思ってたんだ。もうパンツのゴムが伸びて、びろびろだった。それでも友達は許してくれた。クラスのみんなも許してくれた。もちろん先生も。
僕が「じゃあ、僕のパンツがありません。」と言った時、先生はこう言った。
もう、遅いから明日にしようと。
僕はなかなか寝付けなかった。寝ながら目を開けていると、天井のはりに白い何かがぶら下がっていることに気づいた。一瞬おばけだと思った。でも、それが僕のパンツだと気付いた時、心の底から安心することができたんだ。
僕のパンツがどうしてあんな場所にあったんだろう。そんなことを考えるのがどうでも良くなるくらい、その夜の僕は安心して寝ることができたんだ。
※フィクションですよ。