湊かなえさん著「望郷」(短編集 6作品)
収録作品の1つ「海の星」は日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作
最近文庫化された作品。
おもしろすぎるんですけど!
おもしろいせいで、歯医者さんで呼ばれても気づかなかったんですけど!
電車も降りそこねたんですけど!
短編集を読むと、普通「この中で一番おもしろかった作品」とか「いまいちだった作品」がある。好みがあるから。でもこの本は…
全部圧倒的におもしろい!
優劣の"ゆ"もつけられない。賞をとった作品がやっぱり頭抜けてるとか全くない。
どんな作品か?
単行本の帯より
島に生まれ育った人々が織りなす、心の奥底を揺さぶる連作短編集
特定の島を舞台にすることだけが6作品の共通項。
ストーリーや登場人物は完全に別ものなので、それぞれ完全に独立した短編。
全部読後感がたまらないくいい!
推理小説というよりは少しストーリーに趣向を凝らした文学作品って感じ。
どんな話かをバラしたらせっかくのこの本の魅力が台無しになるので、これ以上は書かない。「おっ!」と思った部分をちょっとだけご紹介。
「石の十字架」より
そんな子と一緒にいるのは恥ずかしいと思った。恥ずかしいという感覚は他者の目を意識することによって生じる。結局、わたしも、人を外見だけで判断していたのだ。
ぼくも子供の頃こういう思いをしたからめちゃくちゃ共感できる。
「光の航路」より
いじめのニュースがマスコミで大きく取りざたされると、芸能人や文化人が「自分もいじめられた過去を持つ」と語る場が目に留まるようになるが、いかがなものかと僕は思う。今まさに苦しんでいるいじめの被害者に、己の体験談を得意気に披露してどうする。いじめられるのは個性があるという証拠だ、などと励ましてどうする。被害者でよかった、と思う子どもなどいるはずがないではないか。
<中略>
いじめ、僕はこの言葉を使うのにも抵抗がある。誹謗、中傷、窃盗、暴力、行きすぎたこれらの行為は大人がやれば犯罪とされるのに、子ども同士で起きれば、平仮名三文字の重みのない言葉で誤魔化される。せめて感じで「苛め」「虐め」と表記すれば、子どもでも、人として誤った行為であることを強く認識できるかもしれないが、いじめ、では意地悪の延長くらいにしか受けとめることができないのではないか。
ぼく自身はいじめられた経験はないけど、とても共感できる。なるほど"いじめ"は漢字で書いたほうがいいのかもしれない。
こんな風に、全体のストーリーのおもしろさとは別に、部分的にも魅力的な文章が散りばめられている。
イチオシの本だけど、電車とかで読むことはオススメできない。
またお気に入り作家が増えた…
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とりあえず…
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