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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第二章 人里へ 一巻ダイジェスト部分

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一話 第一異世界人

 苔の蒸した地面を踏み締めて歩みを進める。山脈を背にして、麓を目指して進むこの道無き道は、山から下っているはずなのだが、緩やかな傾斜が地面が傾いている事を感じさせない。久し振りの大自然を満喫しながら、俺は人里を探してひたすら進んでいた。

 あの水晶の輪を潜り抜けてから目に入ったのは、一面の緑だった。明るい緑では無く、巨木に陽射しを遮られた薄暗い森の緑だ。強い草木の匂いに頭がクラクラしたが、それも直ぐに慣れた。
 俺は出てきた場所を振り返り、ボス部屋がこちらからも見れるのかと期待したのだが、そこには何も無く、地面を割って道を伸ばすなだらかな下り坂が有るだけだった。
 どうやら水晶の輪は一方通行だった様で、ここはあのダンジョンの入り口らしい。この道を下って行けばあの谷の底にたどり着くのだろう。
 ダンジョンへと続くであろう道に沿って遠くに高い山脈が見える。視線を覆うように、途切れることなく続く山々に驚嘆の声を上げた。

 周りの確認をする為に、近くの木に登った。木登り自体は子供の頃にやってはいたのだが、この体では恐ろしい程の速度で天辺までたどり着く。下を見ても恐怖などを感じず、まるで階段でも登るかの様な気軽さだった。

 木の上から辺りを見回すと、一面の緑の絨毯で、それが何処までも続いていた。特に目標になる物も無いので、どこからでも見えるあの山脈を背に進む事にしたのだった。

「ふぅ」

 喉が渇いてきたので、目についた倒木に腰を掛け休憩を取る事にした。マジックバッグからコップを取り出し、それに水を注ぐ。冷たく綺麗な水が喉を潤してくれる。
 辺りを見回すが、一向に風景が変わる様子は無い。まあ、まだ数時間しか歩いていないのだ当然かもしれない。

 腰を上げ先へと進む。辺りには鳥などの小動物の気配が探知に掛かるが、あのダンジョンに居たような大きめな気配は今の所無い。それ程広い範囲を探れる訳では無いので、速度の速い何かが近付いてきたら、数十秒でここまでたどり着ける事を考えると、その時は素直に隠れるか逃げる事にしよう。正体が分からない奴と、遭遇なんてしたくない。

 休憩から数時間が経った頃、探知がこちらに向かってくる一つの反応を捉えた。一瞬緊張したが直ぐに何か分かったので、緊張を解きそれが近付いてくる方向に目を向けた。
 程なくして現れたそれは、上空から降りてくると、俺の肩に降り立ち、小さな頭を俺の頬に擦りつけて来る。俺の可愛いペットのポッポちゃんだった。
 この世界における俺の唯一の会話相手が、ダンジョンから出れた事を、体全体を使って喜んでくれている。でも、最後にパンを要求するのは、台無しだと思うよ?

 ポッポちゃんを肩に乗せながら道を進む。時々上空へと上がり、方角を確認してくれる彼女がいれば、進む方向はバッチリ分かる。別に見なくとも大体分かると言うし便利な奴だ。
 それから少し進むと、段々と日が傾いてくる。この世界でも太陽は一つで、地球と同じように沈んでいくらしい。完全に日が落ちる前に、今日の寝床を用意する事にした。

 マジックバッグの中から、掛布団と毛皮の敷布団を用意する。ダンジョンの部屋の中に、最初に有った藁は最初の数カ月でボロボロになり、使い物にならなくなっていた。
 毛皮の服の次に作ったのが、この毛皮の敷布団だ。お蔭で固い地面の上でも快適に寝られるようになったのだった。だが、あそこから出て改めて地面に敷くと、本当にどこの原始人だと思ってしまう。寝袋までとは言わないけど、もう少し考えないといけないかも知れない。

 寝具の次に野営といったらたき火だと思い、木の枝を集めていく。だが、途中である事に気付いた。それは、火を起こす手段が無いという事だ。
 ダンジョンの部屋では、炉から火が幾らでも取れていたので、失念していた。仕方が無いので、木をこすり合わせて火起こしを試みてみるが、煙は上がるがあと一歩の様で一向に火が着かない。意地になっても仕方が無いので諦めた。
 そこまで苦労して火起こしが必要なほど気温は低くない。パンを焼くことが出来ないが、今日はトレントの木で燻製にした鶏肉を挟むだけで我慢する事にした。

 寝ている間に何かに襲われるのは怖いが、一人の野営なのでそれは諦める。幸いポッポが真上の木で寝てくれる。彼女曰く何かが来れば気づくとの事だ。彼女の野性を信じて寝る事にした。



 ダンジョンから脱出して二日目の今日も、ひたすら森の中を歩いた。俺を先導するかのように地面を飛び跳ねながら先を進むポッポが、一々地面を掘り返して食料を探している姿が可愛い。お腹がすいたならパンを幾らでも上げるのだが、味が違うものが食べたいらしい。なかなかグルメな鳥だ。俺も目についた大き目な石なんかをひっくり返して餌探しを手伝ったりした。

 そう言えば、今朝は一つ発見したことが有った。それはマジックバッグの仕様が変わった可能性が有るという事だ。
 今までのマジックバッグでは、中に入れた物は外と変わらず時間の経過、例えば腐敗や、温度の変化などが有ったのだが、新しく瞳石を交換した、このマジックバッグでは温度の変化が無くなったように思える。
 何故そう思ったか言うと、今朝に飲んだマジックバッグから注いだ水が未だに冷えているからだ。大容量の水ならば、確かに温度変化が緩やかなのかも知れないが、それでも一日近く経っている。
 その水が未だに冷たいと言う事は、石を変えた事の影響だと考えて良いのではないだろうか?
 本当にそうであれば、歓迎すべき変化なので、是非そうなっていてほしい所だ。火が起こせれば検証も進むのだが、当分無理かもしれない。火起こしは俺の中で結構な重要案件かもな。

以下、ダイジェスト

 更に先へ進んでいくと、そこには二匹のゴブリンがいた。
 俺は平和的にファーストコンタクトを取ってみるが、見事に襲われた。反撃をして一匹を倒し、もう一匹は捕まえてみる。
 辺りにあった蔦を使って拘束し連れ回す。
 食事を与えると結構素直に従い出す。そうして歩き続け、夜になったので休みを取ると、捕まえた時に与えた傷が大きく腫れ上がり、ゴブリンはとても苦しそうにしていた。
 このまま見殺しにするか、それとも……。
 俺は悩んだ末、ポーションを使い回復してやることにした。
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