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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第一章 脱出 一巻ダイジェスト部分

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十五話 脱出

 今日から、ある計画を元に採掘をする。
 その前にボスの部屋と繋がったままの穴を塞ぐ事にした。これからやる作業で発生する音や、振動などはなるべく気づかれない方が良いだろうと判断してだ。それ以上に、あの穴から何かが侵入してこられても困る。
 塞ぐ前に一度だけ慎重に慎重を重ね、あの目玉を見てきた。初期の配置に戻った様で、こちらに気付く事も無く本来の入り口であろう通路に対峙しているみたいだ。
 長居は無用なので静かに立ち去り、マジックバッグから土を吐き出して穴を塞いでいく。三回分の土で壁を作り完全に坑道が埋められた。

 さて、ここから採掘の再開だ。
 この作戦で必要なのは多量のルーンメタルと、適切な位置に採掘する事だ。
 まずは目標の量のルーンメタルを集める事から始めよう。
 俺はボスの部屋から少し離れた場所の坑道を拡張して、目的のルーンメタルを探す採掘をしていった。



 ルーンメタル採掘の為に、坑道の本線を基本にそこから木の根が伸びる様に広げていき、埋まっている鉱石を探す。ボス部屋の背後に位置するこの場所ならば、ダンジョン外の領域のようで、坑道を伸ばしていってもダンジョンに当たる事も無く採掘が出来ていた。
 探知の気配も反応することなく安心して掘り進められるので、効率よく採掘が進み、そろそろルーンメタルは目標の量が集まりそうである。

 ふぅと息を吐き一息ついて、目の前にある壁に埋まった、ルーンメタルの採掘を再開する。取り敢えずこの鉱石が掘り出せたら、ルーンメタルの採掘はやめてもいいだろう。
 そう思うとこの作業も苦にならなくなる。気合を入れ直しツルハシを振るう腕に力を込める。

 一度部屋へと戻り、採掘したルーンメタルの鉱石をマジックバッグから取り出して、再度採掘へと戻る。
 お次の作業はこの作戦の下地作りだ。
 今度の採掘作業は、ボス部屋の方向へと掘り進める。だが、今回は前に開けた穴より上方に向かい掘り進めていく。
 ボス部屋の真上に出る様に調整しながら、鉄の棒で小さい穴を空けて覗き込み位置を確認していく。子供の軽い体とは言え、ボス部屋の天井をぶち抜いてしまわないよう気を付けながら掘り進み、やっとでボス部屋の中央部分。つまりボスの真上の位置に到達した。
 位置の確認後、作業が出来る位の小さな空間を作り、ボス部屋の天井を保護する為に作った、鉄の板を張り合わせた鉄板をかぶせる。
 ここからは、真上へと掘り進める。希望では十メートルは掘りたいと思っているが、果たしてどれ程の時間が掛かるのだろうか。

 採掘作業だけでは無く、もう一つの重要な作業である武器作りも同時に行っていく。
 今回作る武器は槍だ。だが、ただの槍を作る気は当然ない。このマジックバッグに入る最大サイズの槍を作る。
 当然持って投げる事など不可能なのだが、そんな必要は無い。容量の制限はあるが、どんな形状の物でも入るマジックバッグが有れば目標に当てる事は出来るのだ。

 そう、俺が考えた作戦とはボスの真上から超重量の槍を落として串刺しにするという内容だ。
 落下の力と槍の重量だけを利用して攻撃するのは、このスキルのある世界では間違っている気もするが、そんな事も言ってられない。既に長い時間を掛けて用意してきたのだ。ここでやめるなんて選択肢は絶対にない。

 そんな訳で今はマジックバッグを一度空にして、最大限までルーンメタルと鉄を詰め込んでいる。この方法ならば入る限界のサイズが図れるからだ。その際に今迄掘り出した全てのルーンメタルを投入して測定する。
 今回ルーンメタルの採掘をしていた理由は、第一に武器として優れているので、槍の先端部分に利用する為なのだが、それと同じ位大きな理由は、ルーンメタルは鉄に比べて体積当たりの重量が重いという事だ。
 この作戦では重さ=威力だし、高さ=威力でもある。
 出来る限り双方を突き詰めるのは当たり前の事だったのだ。

 ルーンメタルと鉄の量も測れたので、早速作っていく。
 まずは槍の穂先をルーンメタルで作る。これから作るサイズになると、この炉では小さくて作れない。なので、炉で熱したインゴットが熱で溶けている間に外部で形成してく事にした。
 溶かしたルーンメタルのインゴットを組み合わせて、円錐状に仕上げていく。鍛冶スキルのお蔭で、サイズは頭の中に浮かんで来ているので、迷うことなく進めていく。

 溶かして貼り付けて、軽くハンマーで叩くだけの作業なので、直ぐに俺の力では持てなくなるほどの重さになってきた。
 一度マジックバッグに収納して、盛った土に突き刺し、それを土台にして上からルーンメタルを張り付けるように追加していく。その後、ルーンメタルも尽き、鉄を追加していく。
 日を跨ぎながら、段々と高さを増していく太い槍が、二メートル程になり遂に完成した。
 見た目はまさに鉄の杭。穂先にあたる部分だけがルーンメタルの黒い色をしている。こういう物を無骨とでもいうのだろうか。そんなイメージを槍全体から発している。
 槍の周りの土台にしていた土を取り払う。
 途中で作った鉄柱の支えだけでも、バランスを取れているみたいで、倒れる事は無かった。
 このままでは怖いので素早くマジックバッグに収納して最後の用意が整った。

 既に採掘の方も終えており、その他の下準備も済んでいる。
 これで何時でも作戦が開始できる。
 ここまで来るのにこのボス部屋を発見してから約三カ月を掛けて準備の採掘と武器作りをしてきた。地味な採掘作業が特に辛かったが、この後の喜びを考えれば、我慢できる事だった。
 目玉の討伐は明日にして、今日は美味い物でも食べて精をつける事にした。とは言え、ある食材はここ数カ月全く変わる事のない、鶏肉とパンなのだが、料理レベルが上がったお蔭で肉の焼き加減もかなり上手くなっているので、完全に飽きたということも無い。調味料が無い事がかなりの不満なのだが、それはここを出てから考えよう。あぁ、照り焼き食べたいな。



 朝の日課の鳥の餌付けを終え、大鳩のポッポに近日中にここから移動するかもしれない旨を伝えておく。俺のペットになってからは、ポッポからは俺の大体の方角が分かるらしいので、もしここに居なくとも問題なく探せるらしい。
 そんな機能初めて聞いたんだけど……。

 朝食を取り終え、ボロボロになっている歯ブラシで歯を磨き顔を洗う。これで完璧に目が覚めた。
 いよいよ今日は時間を掛けて用意した作戦の決行日だ。頬を両手で叩き気合を入れる。

 この日の為に作った槍の入ったマジックバッグを腰に着け、今回は毛皮の服を着て坑道に入る。もしかしたらを考えたくないが、上半身裸よりかはいいだろう。
 改めて鎧を用意するか考えたが、やはり身軽な方が良いと思い、防御に関しては、現地に既に置いてある鉄で作った盾を使用する事にした。
 この盾は俺が作戦を決行する場所に、合わせたサイズの盾で、地面から起こすとすっぽりと蓋が出来る大きさになっている。これなら直撃さえしなければ爆風は防げるだろう。たぶん……。

 そうこうしている内に現場に着いた。ボス部屋の真上、ボスの頭上にくり抜かれた直径一メートル、高さ十メートルの穴を登って行く。勿体なかったが、毛皮を細く切って紐代わりにして、木材を使い簡易的な梯子を作ってある。
 上がった先には俺の体が収まる程度の大きさの窪みと、盾が置いてある。
 ここが作戦の決行場所だ。ここからマジックバッグから取り出した巨大な槍を落とす。
 マジックバッグから取り出した時の方向などは、事前に何度も検証していて、収納時の状態を維持して取り出せることは分かっている。真っ直ぐに収納している槍は、この穴に沿って落ちてくれるだろう。

 以下、ダイジェスト

 作戦は見事成功し、ボスを倒すことが出来た。
 部屋に降り立ち、気になっていた水晶に触れると、不思議な声が聞こえた後に砕け散る。水晶の中には一本の杖が入っていた。
 更にボスのドロップ品を回収する。その一つは見たことある瞳石で、今付いている物と交換すると、マジックバックの容量がとんでもなく増えた。
 辺りを見回し水晶の砕けた破片に近付くと、破片が出口を作り出す。マジックバッグの容量が増えたので、一度部屋まで戻って持ってこれるものは全て回収しておいた。
 その道すがらステータスを見ると、神の加護が一つ増えていた。レベルも上がり更に俺の強さは増していた。
 脱出の前に転がっていたダンジョンコアを手に入れて、俺は出口へと飛び込んだ。
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