相場では、大きなテーマをしっかり踏まえて、そのテーマに沿って大胆にポートフォリオを構築したヤツが勝ちやすいです。

だから大きな流れをいちはやく察知することは、とても大事です。

今日は、その話ではなく、「その後、どうなる?」という話をします。

そうやってトレンドを発見し、勝った投資家がやるべきことは、苦労して発見した「成功の方程式」を、もっと延長し、そのフォーミュラを崩さずに、もっと大きく賭けることです。

その際、愚にもつかないムダなヘッジや、予防的なトレードは外し、エンジン全開で「勝利トレード」一本に絞り込むほうがリターンは大きくなります。

勝利トレードには、模倣者が続々参入してきます。

自分とおなじことをやっているヤツが増え始めると、ラクショーで勝てるようになります。つまり甘美な瞬間です。

しかし……

模倣者が増えるということは、利潤機会をアカの他人とシェアすることを意味するので、自分の利食い額は、漸減します。

利益が小さくなれば、元手、つまり賭ける額を増大させることによって、それを補い、さらにそれ以上に儲ければ良いわけです。別の言い方をすれば、レバレッジをかけろ!ということです。

こうして投資家はレイジーになり、自分が「発見」した成功のフォーミュラに固執するようになります。

本人は気がついていないけど、自分が張っているポジションは、漸減するリターンを補う目的でブクブクにメタボになっており、突発的な出来事に対して脆弱になります。

そのへんから自分のトレードは(かならず成功する……いや成功してもらわなければ、困る)という根拠の無い自信というか、宗教がかった、客観性を欠いたものになってしまうのです。

今でいえば、アベノミクスとか「爆買い」が未来永劫に続くと考えることが、これに相当します。(現在の中国の毎月の外貨準備減少額が今後も続くと仮定すれば、あと6か月でIMFの規定する「リスクなく円滑に貿易を行える最低限の準備額」を割り込みます)

アメリカ株の例で言えば、FANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)への固執などが、その例でしょう。

ちょっと距離を置いて、いま第三者の立ち位置からそれを眺めると、自分のしていることが、いかに偏ったものであるか? に気がつくわけですが、本人は(There is too much riding on that.)というポートフォリオ上のsingle point of failureに気がつかないわけです。

たとえばドル/円です。

以前にも紹介したけれど、歴史を紐解くと「FRBの利上げの一年後は、円高になっていることが殆どだ」という事実があります。

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なぜ? そうなの…… という議論はさておいて、統計的に意味がある(75%の確率で、しかも平均すれば-8.5%のドル安幅)データが、いまわれわれの眼前に提示されてあるにもかかわらず、それを頑なに否定しようとする自分たちが居るわけです(笑)

このグラフを見る度に、僕は(あーあ、なんでもっと大胆にドル安を主張しなかったのか!)と自責の念に駆られます。

ウォール街には「マーケットは、最大限の人々を巻き込んで、最も行ってもらっては困る方向へ行く習性がある」という格言が存在します。

いまは、まさしく「皆が行って欲しくない方向」へ相場が突っ走り始めているわけです。

その場合、投資家は(はやく昔に戻って、「原状復帰」してください)とお星様におねがいします。

でも80年代の日本のバブル崩壊、ドットコム・バブルの崩壊、サブクライム・バブルの崩壊などなど、過去のdisruptionを研究すると、大脱線が起きた後で、その前と同じ成功のフォーミュラが援用できたケースは皆無です。

先入観を排し、皆が未だやってないコトを模索するときが来たと思います。