十七回目ゲスト 高橋ナツコ
さん(NATSUKO TAKAHASHI)
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ナツコ |
ご無沙汰してます。今日は遅刻しましてすいません。
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高須 |
最近ご結婚もされ…、お子さんも生まれて…。
しあわせ絶頂やなぁ。 |
ナツコ |
あ、お約束なので…(と、お子さんの写
真をすすっと) |
高須 |
おー、かわいいやん。あらぁ〜しっかりした顔やなぁ。
やっぱり自分の子供はかわいい?親バカになる? |
ナツコ |
親バカはいいですけど、バカな親にはなるまいと。
思いつつも、かわいいですよ、子供はやっぱり。
だけど、引き目で見ると、人間としての造作は
キツイですね、この子。まぁ、生き物としてはかわいいけど。 |
ナツコ |
鼻の下がね、長すぎるんですよ! ほら!(写
真を指さす) |
ナツコ |
おばあちゃん。うちの、というより、生まれた瞬間、
おばあちゃんだったんです。しわくちゃで。
私、犬みたいに安産だったんで、しっかり目に
焼きついてるんです、あの、赤くてしわくちゃな顔が。
ホント、安産で、病院ついて30分で産みました。
で、産み落とした後「おつかれーっす」ってつい言っちゃって。
前日まで、テレビ朝日で4月のドラマの打ち合わせしてたぐらいなんで。 |
高須 |
まじかよ!? 母は強しの意味が違うって…。
じゃあ、最近はこの子の面倒みて、ずっと家にいるの? |
ナツコ |
いや、打ち合わせで外に出てばかりですね。
シナハンでちょっとうちを空けた間に、びっくりするほど成長してて、
驚かされたこともあります。
これぐらいの赤ん坊って、人生で一番成長する時らしいんで。 |
高須 |
だって、忙しいでしょう。
アニメの脚本とかも、けっこうな数こなしてるもんね。
それに加えて、ドラマもやって…。 時間足りないんじゃないの? |
ナツコ |
足りない…。放送作家の悪い癖が残ってて、
ギリギリ体質だから、
余計に時間がないように感じちゃうのかなぁ、とも。
ドラマやアニメの制作現場って、時間も締め切りもきっちりなんですよ。
会議も5分前集合。
バラエティの会議だと、遅刻が当たり前だったりするでしょう。
先輩、あ、三木聡さんですけど、
「会議はわざと30分遅れていけ」って教わりましたから。
多分、真の意味は、
「例え会議に30分遅れたとしても、 それだけテンション高めて行け」
という教えだったと思うのですが、私は言葉通り受け止めてました。
で、さらに、
「遅れた時ほど、ムッとして入れ」って言われて。
これも、言葉通り受け止めてそうしたら、ぶん殴られました。
ていうかコブラツイスト。マジなヤツです。 |
高須 |
作家はこの手を、結構使うなぁ(笑)
「極端に遅れる時は、あえてムッとして会議室に入れ!」
周りの人が勝手に「何か大変なことがあったんじゃない?」と
気を使ってくれるらしんだよね。
でもたしかに、もうこの歳になると時間守る感覚って大事だよね。
社会人として、俺は最近は気をつけるようにしてるよ。 |
ナツコ |
も、ほんとに…バラエティの制作の世界は
変すぎるって外に出てみて分かりますよね…。 |
高須 |
会議室にお菓子とかあるもんなぁ(笑)
ある知り合いの先輩作家なんて、まず会議室に入ったら、
ADにお菓子のダメ出しから始めてるからねぇ。 |
高須 |
未だにグラビアアイドルが何人も載っている雑誌を広げて、
この中でエッチするとしたら誰か?を
「せ〜の」で指さしあってるからね(笑) 変な職場だよ。 |
ナツコ |
プロデューサーのお見合い相手の写
真が並んでたこともありました。
「女の目から見てどうだ?」みたいな。
それから、大人のおもちゃが並んでたこともあったな。
それをセクハラとも思わず、「へぇ〜」って見てた。
狂ってますよね。 |
高須 |
普通の企業とかの会議では考えられへんことやもんなぁ。 |
ナツコ |
普通の企業は、スーツとか着てますもんね。
バラエティーは たまにディレクターが上半身裸だったり、
あ、TBSの合田さんは トランクス一丁だったこともあった。
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高須 |
ナツコって、この世界に入ってどれくらいになるの? |
ナツコ |
二十歳の時…大学二年生からはじめましたから、
もう13年くらいになりますね。 |
ナツコ |
脚本家になりたくて、中学生の時から投稿とかしてたんですよ。 |
ナツコ |
有り得ないようなお話、いっぱい書いてましたね(笑)。
今も取ってあります。生き恥として。
それで、大学二年の時にNHKで学校放送番組、
いわゆる教育テレビでシナリオのコンペみたいなのをやってて、
応募をしたんですよ。
私は考えすぎてしまう癖があって、
教育テレビだって頭では分かっているんだけど、
ぎゅーっと考えすぎちゃって、できあがったシナリオは、
それはもうNHKでは到底ありえないようなシナリオで、
違う方向に力一杯書いちゃってた(笑)。 |
ナツコ |
動物家族っていうタイトルで、
ライオンのお父さんが コアラのお母さんと結婚したはいいけど、
なかなか 子供に恵まれず…なにしろ相手は木の上ですから。
でもお互いとても好きあっていて、子供も欲しいし、
結ばれたいんだけど、お互いの習性がジャマをして。
で、結局、子供はコウノトリが運んできてくれて、
なんとか二人は子供を授かるも、すぐに巣立ちしてしまって。
とにかく夫婦は結婚しても、結ばれない分、
相手を熱烈に恋焦がれる…みたいな。
よく言われるマンネリ夫婦じゃなくて、
一生熱烈な夫婦像を描きたかったのかもしれないし、
ま、実のところよくわかりません。 |
高須 |
俺も昔ね、配役が全員真っ裸なんだけど、
必ず役者の股間だけは何かで隠れて絶対に局部が見えない。
これをワンカットで見せる台本を絵コンテ入りで書いたなぁ。
男性が振り向くと、たまたま猫がいいタイミングでテーブルに歩いてきて、
股間を隠したり、あり得ないことばっか書いてた(笑)
俺の話はいいとして…それからどうなったの? |
ナツコ |
で、当然、コンペには落ちたんですけど、
プロデューサーのひとりが別の機会に声をかけてくださって…。
「君、なんか辛いことあった?」と(笑)。
おっしゃったる意味は深く考えず、喜びいさんで行きました。
それで、学生時代は教育テレビのシナリオをやってたんですよ。
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高須 |
ほー、そんなはじまりやったんや。
そこから、ずっとフリーなの? |
ナツコ |
事務所に所属しないか?みたいなお誘いは何度かありました。
2回くらい会社にも所属したこともあるんですが、
どっちもすごく短期間でしたね。 |
高須 |
女の人ってそんな風に、結局フリーでやってく人多いよね。
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ナツコ |
会社がつぶれちゃったり、考えが甘くて流されたり、
意味もなく立ち止まったり、いろいろあって。
なんとなくですけど、自分のペースみたいなものをみつけると、
フリーになっちゃう人が多いのかも。
バラエティーの世界は特に、女性が上に立つのって難しいとこ
ありますよね。 |
高須 |
そんな風に学校放送をやって…実際に、
民放で最初に手がけた番組っていうと? |
高須 |
当時はフジテレビの看板番組やったからなぁ。
結構いい番組から参加できたんやなぁ。
それはどんな流れで関わることになったの? |
ナツコ |
ご紹介でしたねぇ。バラエティーの世界は、
企画コンペとかほとんどないから、人間関係って大事ですよね。
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ナツコ |
ウンナンさんとかヒロミさんのコント書かせてもらったり…。
そういえば『夢で逢えたら』のコントを書かないか?という
お話もありましたよー。 |
高須 |
ああ、そうそう、女の作家さんにお願いしようって言う話は
あったような気がするわ。
みっちゃんや野沢のコントなんかを、
もっと女性目線で書ける人がほしいなー、って言ってたっけ。
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ナツコ |
そうそう、そんなことを言われて依頼されたんですよ。
でも、結局、その頃仕事として書いたのは、欽ちゃんでした。
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高須 |
『なるほど』ではどんなことをしてたの?
クイズのリサーチ?問題作ったりとか? |
ナツコ |
んー、問題も必死に作ったんですけど、「ふざけてすぎ」という理由で
採用されないことが多くて、マジメに考えてたんですけど…。
で、実際は、ロケ台本を書くことが多かったです。 |
高須 |
そうかぁ…俺がナツコと一緒に仕事したのって、
ホントに最近だもんね。
同じバラエティやってるようでも、
仕事のジャンルが、やっぱり微妙に違ってたんやなぁ。 |
ナツコ |
最近でも、そんなに仕事はご一緒してないですよ。
『あなあきロンドンブーツ』とか…ロンブー関係だけですよね。
私、バラエティでいくと堀江っち(堀江利幸さん)や、
みちスケくん(遠藤ミチスケさん)と同期にあたるんですよ。
そして、光り輝く先輩達の背中をね…
あこがれをもって見つめていたという世代…。 |
高須 |
また、絶対そんなこと思ってないような台詞を!(笑) |
ナツコ |
いや、ホントにね、私たちの世代って大変だったんですから!(笑)
高須さんや、そーたにさんやおちさんや、あ、村上さんもそう。
そんな、今をときめく人達が常に上にいるんですもん。
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高須 |
そう言えば、ミチスケや鮫ちゃんもよう言うてたらしい。
「世代が揃ってしまってて、僕らの世代には いわゆる2番手が集まってるんだ」
って。 だから番組でもチーフじゃなくて、セカンドになってしまうのよね〜。
世代のミゾってやつやなぁ。 |
ナツコ |
そうなんですよ。 上の人達から降りてきて、
現場用の台本とかこの世代がかなり書いたりしてね(笑)。
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高須 |
みんなそうやって!
俺らも上の代の人の台本ずっと書いてたんやから
それが長いか短いかはあるけどね…。
ええやんかー(笑)、実力は付くやんかー。 |
ナツコ |
そりゃあ、確かに勉強にはなりましたよ〜。
鍛えられましたー。
夜中の3時でも4時でも呼び出されるし、
書いてる量、バラエティの頃ってハンパじゃなかった。
今、私ドラマとアニメをやらせてもらってますけど、
放送作家時代の方が、締め切り多かったと思いますもん。
5時間置きに、締め切りがある、みたいな。 |
ナツコ |
もう、移動中の電車もワープロ膝に置いて書いてましたね(笑)。
当時だから、でっかいの。
書いても書いても終わらないんですよー。 |
高須 |
ナツコとかはさぁ〜、ドキュメンタリーバラエティー時代だから
番組のロケ台本とかやん。
俺らの時代は作りもの、ショートコントやコメディーが主流やったから
量は多くないけど、考えるのに時間がめちゃめちゃかかんねんもん。
だって思いつかないと書き出せないんやから。 |
ナツコ |
そうですよね。コントって、思いつかないと、一文字も書けませんよね。
シナリオと違って、プロットポイントがどうとかいう
ある種のルールみたいなものもないし。
考えるよすがさえないと、真っ白なまま会議の時間が来てたりして。
コントの会議って、いやーな、おもーい空気が流れてること多いですよね。
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高須 |
そんな風に書きまくっててさ、自分が
「あ、私もう、このテレビの仕事でいけるなー」と実感したのは、
どれくらいの頃?どんな番組がきっかけやった? |
ナツコ |
ん〜〜、バラエティでそれを思ったことがあったかなぁ…。
私は実感しにくかったみたいです。
だいたいが、女性の作家って、
「女の作家が必要だよね」って言って呼ばれるんですよ。
私はいつも、その部分の期待に添うようなことは
なかったですから…(笑)。 |
高須 |
でも、この世界の女性作家で残ってる人って、
そんな風に期待される女性的な仕事をしてなくて、
男の感覚で仕事できてる人が残っていってると思うよ。
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ナツコ |
なるほど、そう言えば、大先輩の藤沢めぐみさんが
「私って女々しいのよね〜」とおっしゃってたのには笑いました。
女々しいって言うのは男性に対する表現であって…(笑)
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高須 |
ナツコもさ、見た目や喋りは女性っぽいけど、
中身は完全におっさんやん?(笑) |
高須 |
中身の、その、奥底の方がね(笑)。
だって、テレビの中でもバラエティーって、完璧な男社会やん。
そんなところで女性でやってられたってことは、凄いよ。 |
ナツコ |
あ、でも最近は、そこにオバサン感覚も備わってきてるんです。
今度、久々に、オセロの、 あ、妹みたいな感じで
親しくさせてもらってるんですけど、 その情報バラエティーに
参加させてもらうことになりそうなんです。
マネージャーさんから「オバサンが見る番組ですから、ぴったりです」って
ウキウキしながらお電話いただいて。
まあ、とにかく、「女性作家」として仕事で呼ばれても
期待裏切っちゃってたかもしれませんね。
それが私がバラエティから遠ざかっていった理由かも。
…コント書いてる時とかはちょっと違ってたかもしれないですけど。
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高須 |
そうやなぁ…放送作家は自分の番組っていうわけにはいかないからね。
バラエティはどこまでいっても、タレントのものであり、
ディレクターのもの。
作家が自分で「俺らしい番組だ」って思えるようなポジションに
辿り着けるのは、ホント一部だろうし、 思ってたって口には出せないし…。
そうか…それで世界をしっかりと自分で持つために、
ナツコは外の世界へと目を向けはじめたんやね? |
ナツコ |
そんなかっこよくはないですけど。
なんでも夢中でやってた頃は考えてもみなかった、
やりたかったこととか、自分に できることっていうのを
ちょっとだけ考え始めたって感じです〜。
やっぱ、私が上半身裸で会議にいたら、 多少なりともその場が凍ると思うし、
きっとそれは私じゃできなかったことなんですよね〜
。
ドラマやアニメーションの現場では今のところ、
そういう、上半身裸のディレクターとか、 お見合い写
真が並んでるって
光景はお目にかかってないので。 行けるとこまで頑張ってみようと。
あ、ちなみに、その上半身裸のディレクターがね、
「胸毛を抜いてくれ!」とか言ったんですよ、その場にいた人全員に。
理由は眠気ざまし。 抜きましたよ、私は。 |
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