塾講師アルバイトがブラックバイトの原因になりうる、学習塾業界の抱える3つの問題点を特集します

会員登録 ログイン
  1.  
  2. HOME
  3.  > 特集ページ一覧
  4.  > ブラックバイト
  5.  > 塾講師バイトがブラックバイトの原因になりうる、学習塾業界の抱える3つの問題点

塾講師アルバイトがブラックバイトの原因になりうる、学習塾業界の抱える3つの問題点



2015年10月、仙台労働基準監督署が個別指導塾大手『明光義塾』を運営する明光ネットワークジャパンの宮城県内の直営教室に対しアルバイト講師への賃金未払があったとし是正勧告をおこなっていたことが分かりました。


また同年12月、相模原労働基準監督署が関東で個別指導塾『森塾』などを運営する湘南ゼミナールに対し賃金未払などの違法行為があったとし是正勧告をおこなっていたことが分かりました。(いずれも労働組合『個別指導塾ユニオン』が発表)



もちろんこれらは一部の学習塾で発覚した違法行為であり、すべての学習塾でこうした違法行為が行われているわけではありません。


しかしブラックバイトユニオンによると、ブラックバイトユニオンが2014年8月の発足から2015年6月までに受けた約350件の相談のうち、実に約3割もの相談が学習塾や家庭教師などの教育産業に関しての相談であり、しかもそのほとんどが個別指導塾であるそうです。

従って、この度是正勧告が行われた学習塾でのアルバイト講師に対する違法行為は氷山の一角であり、業界全体で改善すべき内容だと言えるでしょう。


ここではそうした塾講師アルバイトがブラックバイトの原因になりうる、学習塾業界の抱える3つの問題点を紹介します。

※あくまでブラックバイトの原因になりうる問題であり、それらを克服し健全な運営を行っている学習塾もあります。



①固定された生徒の通塾曜日・カリキュラム


個別指導塾ユニオンが団体交渉を申し入れた塾の一つ『代々木個別指導学院』(株式会社日本教育協会)が学生講師アルバイトたちに提示していた勤務規定に『期間内での勤務曜日・回数の変更は認められない。就職活動などによる変更も例外ではない』という項目がありました。曜日のシフトを一旦決めたら半年間は就活があろうとも変更することができない、という勤務規定で、法的に無効となる内容だそうです。しかし法律の知識のない学生たちの中にはこうした勤務規定に従い、自身のテスト期間でも休むことなく出勤してさらには単位を落としてしまう学生もいるそうです。


こうした学業に支障をきたすブラックバイトは塾業界に限らず飲食業界や販売業界でも問題になっていることですが、塾業界に関しては『固定された生徒の通塾曜日・カリキュラム』が一つの原因と言えます。


学習塾に通う子どもやその保護者は入会する際に、基本的に毎週何日(何コマ)の授業コースを申し込むかを決めて入会します。他の習い事をしている場合も多く、毎週何曜日に塾に通うのかがある程度固定されることになります。そのため、その生徒を担当する学生アルバイトの講師が毎週決まった曜日に出勤できないと、生徒への指導が行えないために上記の様な勤務規定を提示して、学生アルバイトへの固定された出勤を強制している、という背景があるのでしょう。

もちろん健全な運営を行っている学習塾では、抱えている講師に余裕を持たせているので、仮に数名の講師が欠勤した場合でも受け持つ生徒への指導は滞りなく行っています。


しかし、昨今の求人倍率の高まりに象徴される『人手不足を背景に、ギリギリの講師数で運営している塾もあるのでしょう。

なお、講師に余裕を持たせている塾では、講師が指導してない待機時間に対しても基本的に給与を支払っています。従って逆説的に、ブラックバイトを強いる学習塾はそうした待機時間に対して給与を支払えるほど経営的に安定していないのかもしれません。




②生徒と担当講師の間にできる信頼関係


上述の『代々木個別指導学院』(株式会社日本教育協会)が学生アルバイトたちと結んでいた契約書の中に、『年度末に至らずに自己の都合により退職する場合は、少なくとも30日前までに退職届を提出し、後任者が決定するまでは責任を持って勤務しなければ、甲は乙に対する損害賠償の請求権ほか法的措置をとるものとする』という内容がありました。


代わりの講師がいないうちにアルバイトを辞める場合、損害賠償を請求するという内容で、法的には無効だそうです。しかし、こうした契約を遵守し、アルバイトを辞めたくても辞められない学生は、塾業界に限らず後を立ちません。


先の『固定シフトで休めない』問題でも言えることですが、学生アルバイトが従順に雇用者に従う背景として、学習塾ならではの原因に『生徒との信頼関係』が挙げられます。


生徒との接点が多い個別指導塾では特に、講師と生徒の間に強い信頼関係ができやすいと言えます。従って学生アルバイトの講師は、自分が辞める(休む)ことによって生徒に迷惑がかかってしまうと思い込むため、『責任感』からなかなか辞められないといいます。


また、辞める決心をして塾側に辞める旨を伝えると、『生徒がどうなってもいいのか』『無責任だ』『なんて薄情なやつだ』と生徒を人質にとり辞めさせないようにするそうで、この度問題になった『明光義塾』でもこうしたやり取りが行われていたそうです。しかし塾側が強要しない場合でも、自分の受け持つ生徒への責任感から講師を辞める決心がつきにくいということも学習塾ならではの特徴といえるでしょう。


中には、アルバイト講師が辞めるときに生徒と一緒に送別会を行うことで、学生が罪悪感を抱きにくいように配慮する塾もあるそうです。




③業界全体の課題『コマ給』問題


塾講師アルバイトに関する最も大きな問題点と言えることに『コマ給』問題があります。一部の学習塾では、生徒の送迎や授業後の質問対応、指導報告書の記入などに費やす授業時間以外の賃金が払われない問題です。

(※健全な運営をおこなっている塾ではそうした授業時間外の労働に対しても適正に賃金が支払われています。)


こうした学習塾の実態をブラックバイトユニオンが2015年2月に厚生労働省労働基準監督課に伝え、翌3月に厚生労働省が学習塾業界全体に対し適正に賃金を支払うように要請していたことが同年6月7日の朝日新聞で報道されました。

先の是正勧告のあった明光義塾では1日に1時間半のタダ働きを強いられていた学生がいたそうで、その時間を含めた実際の賃金は最低賃金を下回っていたとのことです。1コマ○○円と言った高時給が魅力である人気職種の塾講師アルバイトですが、授業の範囲内・指導責任とかこつけて不当な労働を強いる一部の塾の違法行為が浮き彫りになった事例と言えるでしょう。


こうしたコマ給問題の背景にも、デフレ経済という昨今の社会情勢が大きく関与していると言えます。2000年以降爆発的に増え、競争が激しい個別指導塾業界では、差別化がわかりやすい授業料の値下げを行う学習塾も少なくありません。その結果、人件費の削減をせざるを得なくなり、講師への賃金不払いが生じていると言えます。


また、塾講師アルバイトの特徴として、一定の時間に対して支払われる『時給』ではなく『コマ給』という1つの授業の対価として支払われる給与体系も『どこまでを授業内に含めるのか』を曖昧にすることで賃金未払を生じさせやすくなっていると言えるでしょう。塾講師アルバイトを始める場合は、『授業は1コマ○○円、それ以外の労働は時給○○円』など、賃金に対する取り決めをきちんと確認するとよいでしょう。




以上、塾講師アルバイトがブラックバイトの原因になりうる、業界の抱える3つの問題点でした。

ブラックバイトを強いる学習塾の経営者だけの問題ではなく、塾業界全体または日本経済の問題として改善していくべき事案なのかもしれません。

         このエントリーをはてなブックマークに追加

深夜バイトにおけるワンオペの問題点を特集します!深夜での一人での勤務、...

深夜バイトにおけるワンオペの問題点を特集します!

ブラックではないホワイトバイトに出会うための5つのポイントをご紹介しま...

働きやすい職場で楽しくバイト♪ホワイトバイトに出会うための5つのポイント

早く出勤したらバイト代は出るの?ブラックバイトのコマ給問題は?という疑...

『定時より30分早く来て』と言われて早く出勤したらバイト代は出るの?コマ給問題は

バイトを辞めたいのに辞めさせてもらえないときの対処法を特集します。愛知...

【弁護士が教える】バイトを辞めたいのに辞めさせてもらえないときの対処法

塾講師バイトってブラック?ホワイト?というテーマで実際に働く、名古屋市...

塾講師バイトってブラックなの?塾講師スタッフに直撃インタビュー!

ブラックバイトが何故なくならないかを特集します。よくある事例や、避ける...

ブラックバイトは何故なくならないのか!?理由を考えてみました。