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「勤務先のバスは危なくて乗れない」…バス会社の過酷な勤務実態 死亡した元従業員が交代要員?
「勤務先のバスには危なくてとても乗れないと思っていた」-。東日本の貸し切りバス事業者で事務職として最近まで働いていたという30代の女性がそう打ち明ける。長野県軽井沢町で「激安」を売りにしたスキーツアーのバスが転落し、学生ら15人が死亡した事故からまもなく1カ月。事故をめぐり、バス運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)のずさんな安全管理が問題になっているが、業界関係者からは「氷山の一角に過ぎない」と指摘する声が上がっている。
「毎日、運転手たちは違法な超過勤務状態だった」。在籍していた会社のバスには乗れないと話した女性は、事務担当として運行指示書などの「書類」と、運転手の「勤務実態」がまるで違うことを目の当たりにしてきたという。
女性によると、勤務先は貸し切りバスの安全性を3つ星で表す日本バス協会の制度では、「2つ星」と認定された「優良企業」だった。
しかし、バスの保有台数に対し、運転手が極端に少なければ過密勤務を疑われるため、死亡した元従業員を嘱託社員として名簿に記載し交代要員がいるように装っていた。
さらに目的地に近い民家を借りて「営業所」とし、実際に出発する営業所からは2時間かかるのに、書類上は30分で到着したように装い、運転手の拘束時間を目減りさせるようなことまでしていたという。
バスやタクシー運転手らの過労は、業界の構造的な問題と指摘されて久しい。厚生労働省によると、平成26年度に過労が原因で脳・心臓疾患を発症したとして労災認定された277件(死亡含む)のうち、業種別では「運輸・郵便業」が最多の92件(33%)を占めていた。