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 県歌「信濃の国」が歌えない県民が約1割――。長野県が昨年末に発表したモニター調査の結果が、波紋を広げている。「県民誰もが歌える」として知られるため、県も「理由はわからない」と首をかしげる。一方、9割が歌えるという結果は、長野県ならではの郷土愛を示している。なぜ、これほどまでに根付いたのか。

 長野県のモニター調査結果によると、6番まで「すべて歌える」が18・6%、「1番は歌える」が60・8%、「1番は歌えないが部分的に歌える」が11・3%で、「歌える」割合が約9割だった。一方、70歳以上の約4割が「すべて歌える」と答えたが、20~60代は「1番は歌える」が大半。30代は「すべて歌える」「1番は歌える」の割合が低く、年代によって認知度が違うことも分かった。

 松本市出身の専門学校2年有馬風樹さん(21)は「小学校で習ったから1番は歌える。長野県の人なら知ってて当たり前」。長野市出身の高校1年丸山成葉さん(16)は「歌えるけど2番までが限界。むしろ他の県で歌えない人が多いなんて知らなかった」と驚く。一方、松本市出身の主婦檀原瑞穂さん(33)は歌えない。「忘れちゃった。学校では習わなかった。メロディーはわかるけど、6番まであることも知らなかった」という。

 専門家は、「歌詞が難しい」「曲が長い」といった理由で歌わない学校が増えていると指摘。2010年の地元紙の調査でも歌わない学校の増加が指摘されており、長野県は「県教育振興基本計画」(2013~17年度)で「全ての県民(県出身者)が歌える」を方針に掲げている。

 「『信濃の国』は、信州人の心の歌。歌えば思想や信条を超えてひとつになれるんです」と話すのは、長野市の太田今朝秋(けさあき)さん(93)。長野県の初代広報県民室長で、1968年の県歌制定時の責任者だった。