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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

マイナス金利は長く続かず、金融を混乱させるだけ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第49回】 2016年2月11日
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2月9日には、長期金利(10年国債利回り)が初のマイナスを記録した(写真はイメージ)

 マイナス金利は、今後どのように推移するだろうか?

 イールドカーブ(金利の期間構造を表す曲線)を分析すると、市場の予想は、つぎのとおりだ。第1に、数年間は続く。しかし、マイナス幅が拡大するのではなく、むしろ縮小する。そして、数年後にはプラス金利に復帰する。

 こうしたことを考慮すると、マイナス金利が経済の構造を大きく変えるようなことはないだろう。

10年国債まで利回りがマイナスになったが
マイナス金利は10年間も続くわけではない

 日本銀行のマイナス金利導入によって、金利は急激に下落した。1年国債の場合は、図表1のとおりである。2月1日から急激に下落したことが分かる(ただし、マイナス金利導入前の2015年10月下旬からマイナスになっていることにも注意が必要だ)。

 また、2月9日には、10年国債までマイナスとなった。このように長期の金利までマイナスになったのは、衝撃的だった。

◆図表1:1年国債利回りの推移

(資料)財務省、金利情報

 以上は、広く報道されている。あまり注目されていないが重要なのは、イールドカーブの形状の変化だ。

 イールドカーブとは、金利の期間構造(期間が長くなると金利がどのように変化するかという構造)を表す曲線である。この分析によって、さまざまな情報を得ることができる。

 例えば、上述のように長期の金利もマイナスになったことから、マイナス金利は、今後10年間も継続すると考えた人がいるかもしれない。しかし、イールドカーブを分析すると、そうではないことが分かるのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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