北朝鮮に対する関係国の独自制裁の動きが本格化してきた。

 核実験と事実上の長距離弾道ミサイルの発射という暴挙に対し、抗議の意思を一定の行動で示すのは当然の対応である。

 日韓両政府はきのう、その内容を発表した。日本は、拉致問題をめぐり2年前に緩めた制裁の復活などを決めた。

 韓国は、南北朝鮮の経済協力の象徴である開城工業団地の操業を止める。米議会も近く、制裁法案を可決する見通しだ。

 4度目の核実験から1カ月以上たっても、国連安保理は制裁決議案をつくれずにいる。北朝鮮の後ろ盾である中国が、慎重な姿勢を崩さないからだ。

 しかし、地域の平和と安定を乱す行為に対し、国際社会が動かずにいる時間を長引かせることは、金正恩(キムジョンウン)政権に誤解を与えかねない。日米韓がそれぞれに取れる独自行動で警告を送ることは政治的に意味がある。

 ただ同時に留意すべきは、やみくもに圧力を加えるだけでは事態を改善できない現実だ。

 特に日韓は北朝鮮との間に個別の懸案を抱えているだけに、硬軟あわせた多様なカードを繰り出すことが求められる。

 日本の制裁のうち、在日外国人の核・ミサイル技術者の往来規制や、資産凍結対象の拡大などは必須の措置だろう。

 一方、多くの在日朝鮮人には北朝鮮に暮らす家族や親類がいる。そうした人びとが苦痛を味わうだけの措置にならないよう慎重な考慮も要る。

 過去に起きた、在日の子どもたちへの嫌がらせ行為などにも目を光らせねばならない。

 制裁に反発し、北朝鮮は拉致問題などの政府間協議の打ち切りを言いだす恐れがあるが、日本政府は粘り強く協議の継続を呼びかけるべきである。

 南北の軍事境界線の北側にある開城工業団地では、韓国企業が払う賃金が、北朝鮮の貴重な外貨稼ぎになっている。金正恩体制には痛手だろうが、韓国の入居企業の経営も直撃する。

 それでも韓国政府が操業停止を決めたのは、それだけ強い怒りを伝えるためだろう。

 こうした日米韓の措置があってもなお、北朝鮮の命脈をにぎる中国の制裁がなければ、本当の圧力にはなりにくい。

 その方向へ中国を動かすためにも重要なのは、日米韓がいっそう足並みをそろえ結束を強めることである。

 金正恩体制を過剰に守れば、中国に対しても、日米韓は一致して厳しい目を向けざるを得ない。そうした外交的なメッセージで北京の行動を促すべきだ。