【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は10日、米下院金融サービス委員会で証言し、米景気の失速リスクと金融緩和の可能性を問われ「利下げが必要な状況に突入するとは思っていない」と強調した。日銀が導入を決めたマイナス金利政策は「2010年に検討したが、金融市場への影響を懸念し採用しなかった」と明かした。
イエレン議長は委員会での議員との質疑で、米景気の先行きについて「雇用環境は好調を維持しており、(原油安など)物価の押し下げ圧力も一時的だとみている」と指摘した。昨年12月に開始した利上げ路線から一転して金融緩和に踏み切る可能性も否定した。
ただ株安など金融市場の混乱には強く懸念を示し「中国の通貨政策を巡る不確実さと、原油市場の不確実さがあり、景気後退の不安をかき立てているのだろう」と述べた。世界経済と米経済の失速リスクは否定しながらも「世界市場の動向をじっと注視する局面だ」と強調した。
FRBは1月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明でも「世界経済と金融市場の動向に注視する」と指摘していた。市場では3月中旬に開く次回FOMCでの追加利上げに注目が集まるが、イエレン議長は現時点でもなお利上げを決断する好材料がそろっていないことを示唆した。
日銀が導入を決めたマイナス金利政策についても触れ「FOMCでも10年ごろに検討したが、金利は引き下げないと決めた」と述べた。金融機関の収益悪化などマイナス金利の副作用を懸念したとみられる。FRBはバーナンキ議長(当時)の下で、10年11月に長期国債を大量購入する量的緩和第2弾(QE2)の導入を決断している。
FRB議長は年2回(通常は2月と7月)、上下両院で金融政策の運営方針や景気動向などについて証言する。イエレン議長は11日にも米上院銀行委員会で再び議会証言に臨む。
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