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全留学生が違法状態 福岡の日本語学校

JAPAN国際教育学院の家宅捜索に入る捜査員ら。摘発により閉校に追い込まれることが分かった=福岡県直方市で2016年1月23日午前10時3分、山下恭二撮影

 日本語学校「JAPAN国際教育学院」(福岡県直方=のおがた=市)を舞台にした出入国管理法違反事件で、逮捕された会長で実質経営者の上野末次(すえつぐ)容疑者(57)が県警の調べに対し「学校経営のために、制限時間の週28時間を超えて留学生を働かせた」と容疑を認めていることが関係者への取材で分かった。約180人の学生のほぼ全員が違法な長時間就労をし、平均時間が制限の2倍近い週約50時間だったことが新たに判明。不法就労のまん延ぶりが裏付けられた。

 上野容疑者は2015年4月下旬〜11月中旬ごろ、学校に通うベトナム人留学生4人に複数のアルバイト先を紹介し、週28時間を超えて就労させたとして、不法就労助長容疑で、理事長の有村ひとみ容疑者(52)ら2人と共に1月23日に逮捕された。

 当初、3容疑者は「週28時間を超えて働いていることは知らなかった」と容疑を否認していた。しかし、学生らの就労先や就労時間、アルバイト料などを一覧表にまとめた「シフト表」が押収されたため、学校側の関与が裏付けられた。シフト表によると、学生のほぼ全員が制限時間を超えた違法長時間労働を繰り返しており、3人は一転して容疑を認めたという。

 学校側は就労先を次々とあっせんし、アルバイト代を得た学生から学費や寮費などを受領していた。関係者によると、上野容疑者は調べに対し、こうした経緯を認め「学費をきちんと納入させるなど学校経営のためでもあるし、(アルバイト代を得る)学生のためでもあった」と説明している。上野容疑者から違法な就労を勧めるケースもあったが、学生側から「もっと働きたい」と要望することもあったという。

 就労先は約50社に及び、個々の就労先での労働時間を制限時間以内に抑えつつ、複数の場所で働かせ違法な長時間労働を可能にしていたことが既に判明している。【吉住遊】

来月閉校の方針

 事件の舞台になったJAPAN国際教育学院の今後について、上野容疑者が福岡県警の調べに対し「経営を続ける意思はない。閉校する」と供述していることが関係者の話で分かった。福岡入国管理局は学生が突然行き場を失わないよう、学校側に3月まで経営を続けるよう指導。現在は授業を継続しているが、摘発により資金繰りが悪化し、3月末までの継続さえ困難な状況だという。

 関係者によると、学校の運営には人件費や光熱費などで月約600万円が必要だ。しかし、逮捕後に上野容疑者名義の個人資産や学校の運営資金など1億円超が押収され、職員の給料の支払いなども窮している。この1億円超の中には、学生たちが支払った2015年度分の学費や、先払いしている16年度分の学費など約3000万円が含まれている。

 学校側は学生に対し3月末で閉校する方針を伝えた。希望する学生には別の日本語学校をあっせんする方針だが、転校の際には新たに入学金や学費など、まとまったお金を納めなければならない。学生たちは手持ち資金が少なく、学校側に支払い済みの16年度分の学費などが返金されないと、転校は難しいという。

 学校には1年半〜2年の3コースがある。2年コースの1年目というベトナム人留学生は「学校がなくなると、次の学校の当てもないし、どうすればいいのか分からない」と不安そうに話した。【吉住遊、菅野蘭】

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