9日のニューハンプシャー州での予備選で、トランプ氏、サンダース氏が勝利をおさめ、それぞれクルーズ、ヒラリー両氏に雪辱を果たした。白熱するアメリカ大統領選挙。その行方を左右する「コーク一族」の動向について、最新レポートをお届けする。
「ビッグ5」が残った
2016年2月1日、アイオワ州の党員集会からアメリカ大統領選挙の民主、共和両党の候補者を選ぶ予備選挙が正式にスタートした。
アイオワでは、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官が、共和党はテッド・クルーズ連邦上院議員がそれぞれ勝利をおさめたが、民主党ではヒラリーの対抗馬バーニー・サンダース連邦上院議員が大善戦し、ほぼ引き分け。
一方の共和党は、これまでトップを走っていた実業家のドナルド・トランプが2位、マルコ・ルビオ連邦上院議員が3位。トランプ旋風が本番に入って少し勢いを失い、マルコ・ルビオが浮上する…という、民主・共和ともに白熱した展開を見せている。
『イスラエル・ロビー』(ミアシャイマーとの共著)でも有名なアメリカの政治学者であるハーヴァード大学教授のスティーヴン・ウォルトは自身のブログで、ヒラリー・クリントン、バーニー・サンダース、テッド・クルーズ、ドナルド・トランプ、マルコ・ルビオの5名を「ビッグ5」と形容している。これは、テッド・クルーズとマルコ・ルビオが、トランプを追い抜く可能性を秘めた有力候補に躍り出たことを示唆している。
私は2016年1月14日に「『コーク一族』米大統領選挙の命運を握る大富豪ファミリーの正体」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47359)という記事を本サイトに寄稿した。その中で、私が翻訳した『アメリカの真の支配者 コーク一族』の主人公で、米国屈指の資産家であるチャールズ・コーク、デイヴィッド・コークのコーク兄弟が、今回の大統領選挙において大きな影響力を発揮するだろうことを指摘した。
大統領選挙が白熱するなか、その行方を左右する力をもつ彼らの最新動向について、ここで述べておきたい。
コーク一族「トランプ嫌い」の理由
アメリカの大企業「コーク・インダストリーズ」の経営者であるコーク兄弟は、現在のところ特定の候補者に対する支援を表明していないが、2016年には約8億8900ドルの政治資金を投入することを既に明らかにしている。また、支援の「候補者」はすでにある程度絞られてはいる。
コーク兄弟を中心に、巨額の政治献金をしている富豪たちは定期的に会合を開いており、2015年1月に開催された会合にはテッド・クルーズ、マルコ・ルビオ、ランド・ポール連邦上院議員が呼ばれている。