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 東日本大震災で被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の沿岸部を中心とした42市町村のうち、36市町村で震災後に人口が減り、この5年の減少数が計15万6182人に上ることがわかった。減少率は15・6%で、人口減少社会を迎えた日本が30年かけて至ると見込まれる水準まで一気に減った形だ。未曽有の被害となった大震災から5年の節目が1カ月後に来る。

 5年に1度、10月1日に実施される国勢調査の2015年分の各県まとめ(速報値)を朝日新聞社が集計し、10年調査と比べた。国勢調査は住民基本台帳など他の資料に頼らず、実際の居住状況を調べるため、実態に極めて近い結果が得られる。

 集計によると、減少率が20%を超えたのは13町村。東京電力福島第一原発の事故で全域に避難指示が出て、いずれも減少率100%だった浪江、双葉、大熊、富岡の4町を含む福島県の9町村のほか、津波で大きな被害を受けた宮城県女川町(37・0%)、同県南三陸町(29・0%)、同県山元町(26・3%)、岩手県大槌町(23・2%)。

 逆に増えたのは、宮城県では仙台市と隣接の利府町、名取市、近隣の岩沼市で、増加数は計4万2188人。県の担当者は「便利で仕事が多い都市部に、被災した沿岸部から人口が流れ込んでいる」と分析する。

 政府が住民基本台帳を元に12~14年の市町村間の人口移動を調べた「地域経済分析システム(RESAS)」でも、沿岸部から都市部、内陸部へと人口が流出していることが明らかになっている。

 福島県では、原発事故で避難指示が出た地域からの避難者が多いいわき、相馬の2市が増えた。

 国立社会保障・人口問題研究所は10年の国勢調査を元に全国の将来人口を推計し、30年に10年比で8・9%、40年に16・2%、60年に32・3%、人口が減ると見込んでいる。(伊藤嘉孝、中村信義)