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DNAを自由に書き換える"夢の技術"「クリスパー」特許は誰の手に?

日本企業はまたも出遅れか

2016年02月11日(木) 小林 雅一
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〔PHOTO〕gettyimages

これまでに人類が発明した技術の中で、おそらく特別の位置を占めることになるであろう「クリスパー(Crispr)」の特許を巡る再審査が先月、米国で始まった――。

●"Control of CRISPR, biotech's most promising breakthrough, is in dispute" The Washington Post, January 13

バクテリア(細菌)から生まれた夢の技術

クリスパー、あるいは「クリスパー・キャス9(Crispr Cas9)」などと呼ばれる、この技術は、いわゆる「ゲノム編集」と呼ばれるテクノロジーの最新モデルだ。

クリスパーを使うと、従来の遺伝子組み換え技術などとは比較にならないほど、「早く」「正確に」「安く」そして「簡単に」あらゆる生物のゲノム(DNAに記された全遺伝情報)を書き変えることができる(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46550)。

クリスパーは元々、大阪大学・微生物病研究所の研究チームが1980年代後半に発見した、大腸菌のDNA上にある奇妙な塩基配列を指す用語だった。

しかし、2012年6月に米カリフォルニア大学バークレイ校のジェニファー・ダウドナ教授と、スウェーデンのウメオ大学研究員のエマニュエル・シャルパンティエ氏らの共同研究チームによって、この「奇妙な塩基配列」がゲノム編集、つまり「DNAの改変」に応用できることが証明された(=米国の科学ジャーナル「Science」に発表された)。

これ以来、「クリスパー」は単なる塩基配列というよりも、画期的なゲノム編集技術を指す用語として使われるようになった。つまりクリスパーは、(人間を含む)あらゆる生物の設計図であるDNAを自由自在に改変できる技術なのだ。

これを使えば、癌やエイズ、パーキンソン病など難病の画期的な治療法が開発され、肥満や高血圧など生活習慣病が遺伝子レベルで解消され、さらには家畜や農作物などを飛躍的に増産して遠い将来にわたる人類の食糧問題が解決され、(もしも社会的合意が得られるなら)親が望んだ通りの子供を作り出す「デザイナー・ベイビー」までが実現するなど、ほとんど夢(あるいは悪夢?)のような世界が到来するのではないかと期待(あるいは危惧)されている。

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