ライブ会場 福岡の難 ゼップ閉鎖 不足に拍車 「開催2割減」懸念 [福岡県]
ホークスタウン(福岡市中央区)の再開発に伴い、大型ライブハウス「ゼップ福岡(Zepp Fukuoka)」が5月8日に営業終了する。1施設の閉鎖ではあるが、福岡市の音楽関係者の間では、会場不足への不安は大きく、福岡都心でのライブ開催が「2割減る」と懸念する声もある。首都圏では大規模施設の相次ぐ改修などによる会場不足が「2016年問題」として取りざたされており、福岡でもよそごとではなさそうだ。
コンサート会場には、体育館のような形で、観客が立ったまま音楽を楽しむ「ライブハウス」、椅子がある「ホール」、大規模な室内競技場などを利用する「アリーナ」がある。1999年にオープンしたゼップ福岡は立席で2千人収容でき、多くの人気アーティストが公演。全国に6カ所あるゼップを回るアーティストも少なくない。公式サイトによると昨年の稼働日数は130日で、人気の高いロックバンドやアイドル、韓流グループの名が並ぶ。
ゼップと同規模の会場となると、福岡シンフォニーホール(中央区、1867席)、福岡市民会館大ホール(同、1770席)、福岡サンパレス(博多区、2316席)と全て椅子つきのホールだ。ライブハウスでゼップに次ぐのはドラムロゴスだが、収容は半分以下の700人にとどまる。
立ったまま自由に盛り上がることができるライブハウスと、観客の動きに制約が出るホール。「ライブハウスの質感を大事にするアーティストは、ホールだと公演を敬遠する可能性もある」(イベント会社関係者)という悩みもある。昨年、ゼップ福岡でライブをした人気バンドKANA-BOONの谷口鮪さんは「ゼップ福岡が無くなると寂しいしどこでやっていいのか。こっちに来るの難しくなると思う」と話した。
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仮に別会場での公演をアーティストが受け入れたとしても、問題は残る。
福岡市内では近年、メルパルクホール福岡が2007年、電気ホールが09年に相次ぎ閉館。いずれも約1200人の収容規模だった。今後は、キャナルシティ劇場が再び劇団四季の専用劇場となり、これまで年間百数十日あった演劇や音楽の公演が、別会場に流れることも予想され、会場不足に拍車が掛かりそうだ。
さらに集客が期待できる週末は、各施設とも人気があり、枠は限られる。ドラムロゴスを運営するドラムグループの西本真也社長は「福岡は東京からの移動費もかかり、お客が多く入らないと厳しい」と語る。イベント会社BEAの伴雅弘常務も「福岡では平日の集客は難しい。アーティストによっては週末に比べて3割ぐらい減る」と話す。
「『東名阪プラス福岡』だったツアーが来なくなる」といった悲鳴も音楽関係者から漏れる。伴常務は「1割5分から2割は公演が減るだろう」と予測する。西本社長は「ゼップクラスのライブハウスがないままだと福岡の音楽シーンには良くない影響が出る」と危機感を募らせ、「湾岸エリアに大きなライブハウスをつくることができればいいが」と提案する。
全国のゼップを運営する「Zeppホールネットワーク」の親会社ソニー・ミュージックエンタテインメントは「なるべく早く再開できるように尽力している」と言うが、先行きは不透明だ。
=2016/02/10付 西日本新聞夕刊=