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フランスの日本マンガ市場、最新事情第2回  多様化するフランスのマンガ市場 売り方の工夫で「プチ・ヒット」を狙え その1

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[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員]

ACBDのレポートには初版部数が2万部を超えたタイトルが公開されている。ここから2015年の市場の特徴をみていきたい。まずは、ビッグタイトル関連と日本での大ヒット作品の動向から。2万部以上売り上げた作品リストについては図を参照してほしい

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■ ビッグタイトルの関連書籍も好調

2015年は「」、「」などのビッグタイトルの関連書籍の売上が好調だった(図)。

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「ONE PIECE」は劇場版アニメの劇場公開こそ控えめなものだったがが、劇場版アニメの関連書籍が発行された。クイズ本も発行され、関連書籍市場も形成されつつある。
NARUTO関連では、ノベライズ作品の「ド根性忍伝」が発行された。執筆したのは直木賞作家の東山彰良である。もしかするとこれがきっかけで、彼の小説が翻訳されるようなことがあるかもしれないし、コミック由来のノベライズ作品から、日本のエンタメ作品が広く翻訳されるきっかけとなればよいと思う。
この他、「Fairy Tail」と「進撃の巨人」も関連書籍が出版されており成果をあげている。特に「進撃の巨人」は派生ストーリーの「悔いなき選択」と「Before the Fall」の両方が好調だ。ビッグタイトルの関連書籍は底堅い需要が見込めることから、今後も拡大していくだろう。

■ 「」はブレークの兆し

日本で大ヒットしたからといって、必ずしもフランスでヒットするわけではない。しかし、日本での大ヒット作品のほとんどは仏訳されている。「進撃の巨人」のように翻訳直後から大ヒットとなる作品もあるが、じわじわと人気を伸ばしていく作品もある。ここでは「暗殺教室」と「七つの大罪」の動向をみたい。

ブレークの兆しがあったのが、日本でも人気のある「暗殺教室」だ。「暗殺教室」はフランスでは2013年の第1巻、第2巻の平均発行部数が22,000部、2014年の第3-6巻の平均発行部数が24,250部、2015年の第7-10巻の平均発行部数が38,000部と徐々に増加している。フランスで人気が出にくい学園ものをベースにしているにも関わらず部数を伸ばしていることは注目される。

「暗殺教室」はKANAから出版されている。KANAは集英社・小学館が共同出資したVIZMEDIAがフランスの既存の出版社を買収し、フランス市場で本格的にマンガ出版を始めたときにもっとも打撃を受けた出版社である。同社の人気タイトルは「NARUTO」のほか、「黒執事」など集英社系のタイトルが多く、このためKAZEの進出にもっとも影響を受けるといわれた。実際、KAZEがマンガ出版を始めたころ、KANAのレーベルを有するMedia Participationでは、自社のバンド・デシネ出版社のDargaudで子供向けアメコミの「Garfield」の出版などに力を入れるなど、マンガ離れともいえる経営方針が目立つようになってきた。
しかし、KAZEが不調であったこともあってか、「暗殺教室」はKANAが翻訳出版することとなった。VIZMEDIAが有するアニメデジタルネットワークでアニメ版をフランス語で配信しており、VIZMEDIAとの協業で徐々に認知度を高めている。バンド・デシネやアメコミも出版するMedia ParticipationのマンガのレーベルであるKANAは強い物流網も持っており、KAZEでなくKANAに翻訳権を渡したことは一定の効果があったようだ。これから、1巻あたり10万部程度が発行されるビッグタイトルに育っていくか、注目される。

一方、日本で人気の「七つの大罪」は2014年の第1-6巻の平均発行部数が32,666部、2015年の 第7-12巻の平均発行部数が30,500部と伸び悩んでいる。PIKAは「Fairy Tail」と「進撃の巨人」という二つの大きなタイトルを抱えていることから、なかなか宣伝に力を割けないのかもしれない。但し、大きく落ち込んだわけではなく、PIKAはフランス最大の出版社Hachetteの子会社なので力もある。ACBDのレポートでは人気作品を3タイトル抱えているPIKAがGlenatを抜きフランスの最大のマンガ出版社になる可能性も指摘している。

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