またか、というのが率直な思いだ。現職閣僚に関わる「政治とカネ」の問題が報じられた。事実なら政治への信頼を著しく損ねる。甘利明経済再生担当相は、国民の率直な疑問に答えるべきだ。
甘利氏の「政治とカネ」の問題を報じたのは、きのう発売された週刊文春である。
記事によると、千葉県の建設会社が、県道工事をめぐり独立行政法人都市再生機構(UR)とトラブルになったことから、建設会社の総務担当者が二〇一三年五月に甘利氏の事務所に相談。URから補償金を得られたため、八月に謝礼として甘利氏の公設秘書に五百万円を渡した。
総務担当者らはその後、十一月に、甘利氏に大臣室で直接、五十万円を謝礼として渡した。さらにURと新たなトラブルが起きたため、一四年二月、内容を説明した上で甘利氏に再び五十万円を渡した、という。
甘利氏はきのうの参院決算委員会で、野党側の追及に対し「その会社の社長一行が大臣室を表敬訪問したのは事実だが、何をしたのか記憶が曖昧なところもある」「事務所に(業者が)来たことは覚えているが事実関係、記憶をたどっている」などと答えた。
自身の金銭受領の話である。本当に記憶にないのだろうか。
受領が事実なら、大臣室での五十万円は政治資金収支報告書への記載はない。寄付を受け取りながら意図的に記載しなかったとしたら、政治資金規正法違反に問われる可能性もある。甘利氏は事実関係を説明すべきであり、国会には追及の責務がある。
甘利氏は安倍晋三首相を支える政権の中心メンバーで環太平洋連携協定(TPP)も担当する重要閣僚だ。「政治とカネ」の問題を抱えたままでは内閣全体の信頼性も揺らぐ。一六年度予算案審議への影響も避けられない。首相には任命責任もある。いずれ進退を判断せざるを得ないだろう。
ただ、仮に閣僚や議員を辞めることがあっても、それで幕引きは許されない。甘利氏は政治倫理審査会など国会の場で、進んで説明責任を果たすべきだ。
法に反する疑いがあるのなら、もちろん司法の出番である。
秘書による口利きが今も日常的に行われているとしたら驚きだ。カネで政治をゆがめることがあっては断じてならない。甘利氏だけではなく、政治に関わる者全員が姿勢を問われている。いま一度、襟を正すべきである。
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