韓国で“女叩き”が止まらない。
今年の干支は「丙申(ひのえさる)」だが、韓国ではこれを「ピョンシンニョン」という。「ピョンシン」の同音異義語は「障がい者」を、また「ニョン」は女性を、それぞれ蔑視するときに使う単語。漢字に置き換えると、「病身女」といった具合か。そのため男性同士の飲み会の席などで、「ピョンシンニョン」が笑いのネタになっているという。SNS上では「ピョンシンニョン冗談NOキャンペーン」といったものが行われたほどだ。
そんな丙申年だからか、一般人だけでなく、社会的責任の大きい政治家からも女性に関する失言が飛び出している。
渦中の人物は、リュ・グンチャン元国会議員。彼は自身のTwitterで、新政治民主連合を離党して新党結成に動くなどと何かと動きの激しいアン・チョルスという国会議員を非難したのだが、その表現方法がまずかった。「アン・チョルスは、嫁入りしていない処女のときは新鮮に見えた。しかしこの間、彼は2度、3度と結婚して雑巾になってしまったのだから、今さら誰と結婚しようが、なんの関心があるだろうか」などと発言。処女を“新鮮”、離婚経験者を“雑巾”などと表現した軽率な発言は、女性を侮辱したとして非難を集めた。本人は慌ててツイートを削除したが、自身の女性観を端的に表すものであったことは否めない。
また、与党セヌリ党のキム・ムソン代表も最近、韓国の低出生率に関する対策特別委員会で「朝鮮族(中国在住の朝鮮民族)を多く受け入れるべきだ」「女性に子どもを3人産ませる運動を展開すべきだ」などと発言し、女性団体から「中国同胞に対する蔑視、女性たちに対する誤った見解」と痛烈な批判を受けている。女性が安心して子どもを産める環境や制度を作るのではなく、「3人産ませればいい」という安直な発言だけに、批判されるのも無理はないだろう。
ネット上はもちろん、リアルにおいても韓国で女叩きが止まらない原因のひとつとして、近年の韓国女性の活躍が下地になっているという見方がある。周知の通り、韓国大統領は女性であるし、キム・ヨナをはじめとする女性アスリートの活躍も目立った。一方で、より身近な女性の社会進出が増えたことも一因になのかもしれない。
ソウル市が2月2日に発表した「2015年ソウル市事業体調査主要結果」を見てみよう。それによると、ソウルの事業体で働く女性は、14年末時点で206万316人となっており、前年比4.12%も増加した。男性は2.81%増(260万6,372人)にとどまっており、ソウル市で働く全人口の43.7%を女性が占めていることがわかる。
日本では「女性の活躍推進」が掲げられ、「上場企業で女性役員1人登用」などが呼びかけられているが、ソウルには女性が代表を務める事業体が27万228社あることも判明。前年よりも3.8%増で、すべての事業体のうち、女性が代表を務める事業体の比率が33.25%となった。10年前と比べると、全体の比率が2.31%ポイント上がっており、今後も増加する見込みだ。具体的な数字を並べてみると、一般社会においても女性の活躍がめざましいことがわかるだろう。
今年に入って、ますます加速しているように見える韓国社会の女叩き。今のところ、解決の糸口は見つかっていないようだ。