緩和2回分帳消し…1万6000円割れ
10日の日経平均株価は1万6000円を割り込み、日銀が2014年10月31日に追加金融緩和を実施する直前の水準に逆戻りした。市場では、新興国の景気減速懸念に加え、米欧経済への不安も浮上。投資家が安全資産とされる円を買い進め、円高が日経平均をさらに押し下げる構図だ。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が追加利上げに慎重姿勢を示したが、「不安定な相場が続く」との見方が出ている。
日経平均が上昇基調に入ったのは、黒田東彦日銀総裁が13年4月に大規模な「量的・質的金融緩和」に踏み出してからだった。はずみをつけたのは14年10月の「量的・質的金融緩和」第2弾。日銀が国債の購入を増やして、さらに大量の資金を供給し、「緩和マネー」が株価を押し上げた。日経平均は昨年、一時2万円を超えた。
今年に入って金融市場が混乱し、日銀は1月29日にマイナス金利導入を決め、緩和策を強化した。その後は株高・円安が進む場面もあったが、効果は長続きしなかった。日経平均の昨年末からの下げ幅は計約3000円になり、14年10月と今年1月の2回の緩和による株価上昇が帳消しとなった形だ。
株安を招いた要因の一つが、経営不振に陥っているドイツ銀行だ。市場では「社債の利払いに行き詰まる可能性がある」などと指摘されている。欧州中央銀行(ECB)は既にマイナス金利を導入しており、金利低下で欧州の銀行は運用収益が圧迫されている。
堅調とみられてきた米国も陰りが指摘されている。昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は0・7%(前期比年率換算)に急減速した。さらに原油安の影響でエネルギー関連企業の破綻懸念も強まり、市場の不安を高めている。
FRBのイエレン議長が追加利上げに慎重姿勢を示し、市場はこれをひとまず好感して、10日のニューヨーク株式市場は上昇して取引が始まった。だが、「中国経済の減速や原油安に伴う産油国の財政悪化といった問題の抜本解決にはつながらず、効果は限られる」との指摘がある。
また、米国の追加利上げが遠のくと円がドルに対して買われやすくなり、円高がさらに進んで日経平均株価を圧迫する恐れもある。
市場の関心は国際的な政策協調に集まっている。注目されているのは今月26、27両日に中国・上海で開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議だ。
SMBC日興証券の太田千尋投資情報部長は「市場の混乱を巡って何らかの対応が打ち出されるかが焦点」とみる。ただ、「震源地の中国が議長として、どこまで指導力を発揮できるのか」と疑問視する声もある。【鈴木一也、ワシントン清水憲司】