今日、ドイツ銀行(ティッカーシンボル:DB)が、自ら発行したココ債の買戻しを検討しているとほのめかしました。

ココ債とは、自己資本比率が一定水準を下回るなど、引き金となる条件が満たされたとき、発行体の意向で株式に転換できる債券を指します。CoCoのContingency(コンティンジェンシー)とは、「なにかあったとき」という意味です。早い話、「有事」という意味です。

その場合は、ドイツ銀行の一存で、株式に転換できるわけです。

リーマンショック後に欧州の銀行が自己資本を増強しなければいけなくなったとき、ココ債がブームになりました。

なぜでしょうか?

規制当局からみれば「銀行の自己資本増強が出来た」と見做すことができます。

債券の投資家からすれば、ほんの少し利回り面で有利なので、低金利の折、有利な運用先と映ったわけです。

最後に、それを発行する銀行の立場では、すこしでも低コストで自己資本を補強することが出来ます。また普段はた自己資本を高く維持しなくて良いことになり、ROEなどのレシオの見地からはリターンを高く見せることができるわけです。

つまり誰から見ても、いいことずくめの債券なのです。

それはあくまでも「有事にならなければ……」という条件付きですが。

今回、ココ債が大問題になったのは、マーケットの環境が悪い、つまり「有事」っぽいムードなので、ドイツ銀行の株主は(ひょっとしてドイツ銀行がココ債の転換オプションを講師すれば、株がジャブジャブ出て、希釈化がおこるよね)という不安を抱いたからです。

それでドイツ銀行の株価がスルスル下がり出した……

すると今度はココ債の投資家が(ちょっとまて、ココ債は、株式に化けるのかよ…。迷惑なんだよ、株なんかでもらっても)と、今度はココ債を投げ始めた、、、

こうして悪循環になり、ココ債が下がったわけです。

ドイツ銀行は、別にいま手元のキャッシュに困っているわけではありません。だからべこべこに凹んでいる自分のココ債を安値で買い戻せば、「うちは困っていません!」というアピールになるし、安値で拾ったココ債と、額面との差額は「トレーディング利益」に計上でき、それは留保すること通じて自己資本強化につながるわけです。

今日、ドイツ銀行が、そういうことを「チラッ」とシグナルしたのは、そのため。

これは、ごく短期的にはドイツ銀行の勝利です。

でも長期では同行の自己資本は10%をちょっと超える程度であり、余裕がないです。だからいずれ資本増強に着手しなければいけないし、バランスシートを一層縮小することも必要になるでしょう。

db