株式公開は、野心的で果敢なIT(情報技術)起業家が追いかける夢だった。しかし、シリコンバレー出身で注目を集める企業、ウーバーやAirbnb(エアビーアンドビー)などの一連のIT企業はこのところ、未公開企業のオーナーという暗がりの中で足踏みする方を選択している。
■15年の上場企業数はわずか30社
ここ数年、派手な株式公開よりも、とてつもなく高い評価額で資金調達ができる未公開の方が好まれていた。比較的小規模な同業者と同様に、これらの企業は数十億ドルという資金を調達しており、急いで取引所に上場して資金を集めようとはしていない。
米国におけるIT企業の新規株式公開(IPO)件数は先細りしている。金融調査会社ディールロジックによると、2015年に上場したIT企業はわずか30社と前年のおよそ半分にとどまり、09年以降で最低となった。
今年1月初め以来、米国の株式市場で時価総額が急激に減少したことを考慮すれば、「ユニコーン」と呼ばれる評価額10億ドル以上の未公開のIT新興企業が、近い将来IPOに殺到することはないだろう。この下落局面のなか、昨年実施された一部IT企業のIPOは打撃を受け、そのことが投資家の意欲も減退させている。
ドイツ銀行でIT株式資本市場部門の責任者を務めるクリスティン・デクラーク氏は「今年の株式市場の乱高下で、IT企業がIPOを実施するための絶好の機会を見いだせない」と語る。
多くのIT企業は、市場が落ち着きを取り戻したときにIPOを実施できるよう足場は固めている。銀行の担当者らは、これまでと同じくらい多数の予備軍が控えていると主張する。
クラウド関連のサービスを提供するユニコーンのひとつであるニュータニックスはIPO申請を公にしたが、多くの企業が公にせずに申請したと言われている。
IPOの上場投資信託(ETF)を運用するルネサンス・キャピタルのアナリスト、マシュー・ケネディ氏は「16年にIPOを実施したいというIT企業は控えているものの、市場環境がよくない」と指摘する。「需要もある。ただし、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドが新興企業に対して出してきたような評価額は望めなくなったということだ」
しかし、VC側も資金を滞留させておく期間をいつまでも長引かせたくはない。
大半の新興企業にとってIPOは依然として最終的な到達点ではある。IPOを実施する理由は、資金調達の手段や初期の投資家に利益をもたらすだけにとどまらないからだ。
IPOには、上場に伴って世間の注目を集めるという利点がある。従業員は保有する自社株式を売買できる場を与えられ、経営陣は、取引所で常に更新される株価に基づいた自社の評価額で買収資金を調達できる。対照的に、未公開企業の案件の場合、評価額は一定期間ごとにしか更新されない。
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