2016年02月10日

◆ 太陽光発電の CO2 排出

 太陽光発電は CO2 を排出する。その排出量は、火力発電の排出量と同程度だ。

 ──

 太陽光発電は CO2 を排出しないと思われている。しかし実際には、太陽光発電は CO2 を排出する
 こう書くと、「そんな馬鹿な!」と思う人が多いだろう。しかし、本当によく見れば、「排出する」とわかる。

 私がしばしば語る「ペテンのトリック」を思い出そう。左手にあるコインを、右手に移す。ここで、右手だけを見ると、「コインがなかったのに、コインが増えた」というふうに見せかけることができる。「コインが増えました。無から有を生み出しました」というわけだ。こういうペテンがある。

 同様に、左手にあるコインを、右手に移す。ここで、左手だけを見ると、「コインがあったのに、コインがなくなった」というふうに見せかけることができる。「コインがなくなりました。有を無にしました」というわけだ。こういうペテンがある。

 以上の二つに共通することは、こうだ。
 「全体を見れば、増えてもいないし、減ってもいない。しかし片方だけを見ると、増えたとか減ったとか、誤認する」

 太陽光発電のペテンも、これと同じだ。全体を見れば、増えてもいないし減ってもいない。しかし、片側だけを見れば、減ったように見える。こうして、「太陽光発電は CO2 を排出しない」という論理ペテンを成立させるのだ。

 以上が、論理ペテンの原理だ。
 以下では、具体的に述べよう。

 ──

 太陽光発電は CO2 を排出しないと思われている。
 だが、太陽光発電には、致命的欠点がある。それは、「晴れた日の昼間しか発電しない」ということだ。夜間や雨の日には、発電量がゼロ同然となってしまう。これではまったく使い物にならない。
 だから、われわれが「太陽光発電」と思っているものは、それ単独では成立しないものだ。必ず、バックアップ電力とペアになって成立する。
 つまり、我々には、次の二つの選択肢がある。
  ・ 太陽光発電 + バックアップ電力
  ・ 他の発電 (例。LNG、石油、石炭、原子力)

 
 他の発電というのは、実際には何通りもあるのだが、ここではとりあえず一つにまとめておこう。
 ともあれ、ここでは、「太陽光発電」という単独の選択肢は成立しない。(そんなものを選択すれば、たちまち停電だらけになる。)太陽光発電を選択したければ、必ず、バックアップ電力とペアであることが必要だ。
 つまり、われわれが「太陽光発電」と思っているものは、実は、「太陽光発電」単独ではなくて、「太陽光発電 + バックアップ電力」なのである。この事実を認識しよう。

 さて。ここで、「バックアップ電力」とは何か? それが問題となる。
 ここで、いきなり解答を言えば、こうだ。
 「バックアップ電力とは、電力会社の発電設備のうちでも、効率の悪いもののことだ」

 その理由は、こうだ。
 「電力会社の発電設備のうち、効率の良いものは、常時稼働させる。一方、効率の悪いものは、なるべく稼働させない。どうしても電力が足りなくなりそうなときに限って、効率の良いものから順に少しずつ駆り出される」


 つまり、相対的に効率の悪いものが、バックアップ電力となるのだ。
 さらに、相対的に効率が悪いだけでなく、絶対的にも効率が悪くなる理由がある。こうだ。
 「効率が悪い発電設備を更新したいと思うことがある。しかしながら、更新しても、更新後の稼働率が低ければ、更新にかかった設備投資の費用を回収できない。ゆえに、効率が悪い発電設備を更新するためには、稼働率が高いことが必要条件となる。ところが、太陽光発電のバックアップ電力としての役割を負わされれば、自動的に稼働率は低くなる。(雨の日と夜間にしか稼働しないからだ。)かくて、稼働率が低いので、更新されなくなる。つまり、効率が悪いままとなる」


 これはどういうことか?
 効率が悪い発電設備は、できればさっさと更新したい。定期点検の手間などがかかる古い設備は、いつまでも使いたくない。こんな金食い虫は、さっさとスクラップにしてしまいたい。
 しかしながら、これをスクラップにして、新しい設備を導入しても、その役割が「バックアップ電力」としての役割であるなら、稼働率が低くて、巨額の投資を回収できない。
 ゆえに、こういうふうに「稼働率の低い設備」については、「運用コストが高くても、設備投資の費用がかからないもの」というのが、最善なのだ。逆に、「運用コストが低いが、設備投資に多大な費用がかかる」というものは、「稼働率の低い設備」については不適切なのだ。
 このことは、次の本に詳しく書いてある。



ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か


    ( ※ なお、現実には、設備を更新したら、更新後の新規設備は、常時稼働させる。かわりに、二番目ぐらいに効率の悪い設備を稼働させる。……しかし、こういうことをしても、新規設備の投資には巨大な金額が必要となる。それよりは、効率の悪い旧設備を、たまにちょっとだけ稼働させる方が、ずっとコスト安で済むのだ。だから実際に、真夏の猛暑時には、効率の悪いポンコツ設備が駆り出される。たまに使うだけなら、ポンコツ設備で十分なのだ。)


 以上のことから、こう言える。
 「太陽光発電は、それ単独では CO2 を排出しない。ただしそのことが成立するのは、晴れた日の昼間だけである。雨の日や夜間には、太陽光発電は発電しないので、かわりにバックアップ電力が発電する。しかも、そのバックアップ電力は、効率の低い旧式の発電設備なので、大量の CO2 を排出する。両者を合わせれば、無視できない量の CO2 を排出する」

 
 では、無視できない量とは、どのくらいか? それを計算してみよう。

 ──

 まず、太陽光発電の発電量は、次のグラフでわかる。





 夏の電力使用量は、次のページにある。
  → 東電の電力状況(2011年)

 いっぱいあるが、一つだけあげれば、これがある。





 以上の両者を比較すると、こう言える。
 「太陽光発電の最大発電電力を 100とすると、その発電量を出せるのは、昼の正午ごろだけである。朝や夕方は、晴れていても、発電量はゼロに近い。また、夜間はずっと太陽光がないので、もともと発電しない。一方で、電力需要は、深夜から未明でも半分ぐらいの需要があり、他の時間ではピーク量に近い需要がある」


 このことから、次のように結論できる。
 「太陽光発電の発電量に対して、バックアップ電力の発電量は、1倍〜2倍ぐらいの発電量がある」

 これが、二つのグラフを対比して、わかることだ。

 さらに、次のグラフがある。発電方式ごとの効率の差だ。



出典


 ここからわかるように、石油や石炭を使う旧式な火力発電は、最新型の LNG 発電に比べて、倍ぐらいの CO2 排出がある。

 ──

 以上のすべてをひっくるめて計算すれば、次のように言える。
 「太陽光発電は、正午のころには、 CO2 を排出しない。しかし、正午以外の時刻には、足りない分をバックアップ電力が発電する。特に、夜間にはバックアップ電力だけが発電する。総合的には、太陽光発電の発電量に対して、1〜2倍の量の電力をバックアップ電力が発電する。しかも、その発電効率は低いので、バックアップ電力は、最新型 LNG に対して2倍の CO2 を排出する。したがって、太陽光発電によって削減した CO2 の量よりも、バックアップ電力で増加した CO2 の量の方が、多くなる」


 要するに、一言でいえば、こうだ。
 「 太陽光発電は、それ単独では CO2 を排出しない。しかしながら、太陽光発電とバックアップ電力とのセットで考えると、それは、最新型の LNG発電よりも、 CO2 の排出量が多い」


 ここから得られる結論は、こうだ。
 「 CO2 の排出量を減らしたいのであれば、太陽光発電を増やすよりも、旧式の火力発電を、最新型の LNG 発電に置き換える方がいい」


 要するに、馬鹿高い金をかけて太陽光発電を推進するよりも、ちょっとだけの金をかけて、最新型の LNG 発電を導入し、その分、旧式の火力発電を廃止すればいいのだ。これが最も賢明で、最も有効な方法なのだ。

 「左手だけを見ず、右手と左手を合わせて見る」という認識方法をすれば、物事の真実が見えてくる。

 
posted by 管理人 at 00:46 | Comment(0) | エネルギー・環境2 このエントリーをはてなブックマークに追加
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