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 米大統領選のニューハンプシャー州での予備選が9日、投開票された。共和党は実業家のトランプ氏(69)が勝利を確実にし、アイオワ州党員集会での敗北から巻き返した。一方、民主党は、サンダース上院議員(74)がクリントン前国務長官(68)の得票を大きく上回る見通しで、同じく初戦の僅差(きんさ)の敗北から巻き返した。

 米CNNの独自集計によると、共和党は開票率26%の段階で、トランプ氏が34%の票を得て、2位に倍以上の差をつける圧勝の勢い。政治経験もなく、既成政治の打破を訴えて「偉大な米国の復活」を訴える姿勢が支持を集めた。過去、ニューハンプシャー州での勝者が同党候補者指名を受けるケースが多く、今回の勝利でトランプ氏が「本命候補」としての足場を固め、今後の選挙戦でも弾みをつけそうだ。

 また、2位には下院議員などの政治経験が豊富なオハイオ州のケーシック知事がつけた。ブッシュ元フロリダ州知事(62)や、アイオワ州で勝利したクルーズ上院議員(45)、ルビオ上院議員(44)が3位争いで激しく競い合っている。

 一方、民主党では開票率26%の段階で、サンダース氏が58%で首位となり、クリントン氏の40%を大きく上回っている。これで民主党内の候補者指名争いは1勝1敗となる見通しだ。

 サンダース氏はウォール街など一部富裕層と政治の癒着を指摘。ウォール街への課税強化や貧富の格差是正、公立大授業料無償化、国民皆保険導入など、既存の制度を大胆に変える「政治革命」を訴えてきた。

 サンダース氏はニューハンプシャー州に隣接するバーモント州選出の上院議員で、地元での高い知名度も追い風になった。同州コンコルドの高校に集まった数百人の支持者は、当選確実の速報が流れると拳を突き上げ大歓声をあげた。

 一方、米国初の女性大統領を目指すクリントン氏は9日夜、支持者を前に「サンダース氏の勝利を祝福する」と敗北を宣言した。2008年の大統領選では、ニューハンプシャー州予備選でオバマ氏に勝利していたが、今回は勝利を逃した。

 20日のネバダ州党員集会や27日のサウスカロライナ州予備選では有利とされ、全米でもクリントン氏優位の情勢は変わらないとの見方が強いが、無党派層や若者への浸透で課題を残した。

 ニューハンプシャー州は、2008年の予備選の際も全米で最高の投票率を記録。今回は、民主、共和両党とも話題の候補が競り合う形となったため、同州は08年を上回る歴史的な投票率になるとの見通しを発表した。(マンチェスター〈ニューハンプシャー州〉=佐藤武嗣)

〈ニューハンプシャー州予備選〉 民主、共和両党は7月の全国党大会で大統領選候補者を指名するための代議員を州単位で選ぶ。1日のアイオワ州での「党員集会」が、党員が討議して決めるのに対し、投票で決める最初の「予備選」がニューハンプシャー州で行われる。同州予備選は、有権者の約4割を占める無党派層も民主、共和両党いずれかに投票できるのが特徴。1976年以降、全米で党員集会・予備選はこの2州で最初に実施するのが定着している。