建設会社男性「事務所の協力で交渉進む」
URとの補償交渉 「口利き」を証言
甘利明前経済再生担当相の金銭授受問題で、現金を渡した建設会社の総務担当者だった男性が毎日新聞の取材に応じた。都市再生機構(UR)との補償交渉で甘利事務所に協力を求めたところ、解決の見通しが立たなかった交渉が急に動き出して補償額が提示され、その額からさらに約4000万円上積みされて約2億2000万円になったと証言した。男性は、解決の謝礼として補償金の一部から甘利氏の当時の秘書に現金500万円を提供したと説明した。
取材に応じたのは、最初に週刊文春に証言した一色武氏(62)。同氏によると、URの千葉県白井市での道路工事を巡り、建設会社は建物の移転などが必要だとして補償を求めていた。2012年の段階でURが約1600万円を支払うことで合意。建設会社は追加補償を求めたが、交渉は難航していた。
このため一色氏は13年5月、神奈川の甘利事務所で解決を依頼した。事務所長だった公設秘書(先月辞任)から「シャンシャンでいけますよ」と言われ、紛争の事実確認を求める内容証明郵便をURに送るよう助言され、指示に従ったという。
一色氏が元秘書から受けた説明では、別の秘書をUR本社へ差し向け、この秘書が1時間待たされたため「国土交通省へ行く」と言ったところ、URの担当者が現れ、補償に対する対応が変化したという。
一色氏によると、間もなくURから追加補償額として約1億8000万円を示され、建設会社側が「もう少し何とかならないか」と求めたところ、その場で約2億円に増額された。さらに交渉後、電話でURに増額要求すると、UR側は「計算してみましょう」と言って約2億2000万円を提示し、依頼からわずか3カ月後の13年8月6日に合意した。
同8月20日に補償金の一部が建設会社に入金されると、一色氏は1000万円を引き出し、その日のうちに甘利事務所を訪ね、元秘書に渡した。元秘書は500万円を受け取り、残りは「いつでも使えるように預かっておいて」と一色氏に戻したという。
一色氏は補償増額の経緯を踏まえ、甘利事務所への口利き依頼が効果てきめんだったとし、「(URが)どういう計算をしたかわからないが、お願いが実った」と証言した。【本多健、樋岡徹也】