2016年02月09日

Appbankさんの問題について、すごく基本的なところから、なるべく簡単な解説を試みてみます

なんか、一連の流れをみていて、ふとなるべくわかりやすい形で解説してみたい衝動に駆られました。

既出だとは思うのですが、「コーポレート・ガバナンス」とか「企業コンプライアンス」といった言葉について、あまりご存知でない方向けの一般的な解説記事です。

ご存知の方には読む価値がない内容なのでご了承ください。



株式というものがあります。会社に参加する権利、みたいなもので、株式会社は株を持っている人のものです。多く持っている人程、その会社での発言権が大きいです。

・株式は、売ったり買ったりすることが出来ます。買いたい人(会社に参加したい人)が多いと、株式の値段は上がります。反対に下がることもあります。

・「株式上場」という制度があります。会社の株を証券取引所が扱うことで、たくさんの投資家がその株を売買できるようにする制度です。株式公開とか、IPOとか呼ばれることもあります。

・株式上場は、投資家にとってはその会社に投資することが容易になるというメリットがありますし、会社にとってはたくさんの資金を調達することが可能になるというメリットがあります。

・けれど、株式上場をするためには、幾つかの厳しい基準をクリアしないといけません。たくさんの投資家に株を取引きしてもらう訳ですから、しっかりとした信頼性のある会社でないと上場させられないよ、ということです。

・例えば「どれくらいの間、安定して事業を継続しているか」とか、「どれくらいの利益を挙げているか」とか、「どれくらいの株数があって、株式を安定して取引することは可能か」とか。他にも色々あります。

・その中に、「反社会的勢力との関わりがないこと」という基準があります。つまり、会社が暴力団や暴力団関係企業の資金源に使われると社会的に非常に良くないので、そういった勢力とかかわりがある会社は上場させてはいけないよ、という決まりなんですね。

・こういうことについて、ちゃんと法令に基づいて健全にやってるよ!というのを常に社内でチェックすることを企業コンプライアンスといいます。また、コンプライアンスを含めて、企業経営を健全に進めていくこと自体をコーポレート・ガバナンスといいます。

上場した企業は、コンプライアンスをきちんと行い、「うちは大丈夫だよ!」とか、「こんなことがあったよ!ごめんなさい!改善します!」ということを、株主や社会にきちんと開示・説明しなくてはいけません。

・これを企業の社会的責任とか、説明責任といいます。

・さて。上場する際の様々な基準については、会社を上場させる「証券会社」が責任を持つことになります。

・ここで、「監査法人」という人たちが出てきます。

・監査法人は、企業が健全な経営をしているかどうか厳しくチェックして、「この企業はちゃんとやってるよ」という監査結果を出してくれる会社です。株式上場する場合には、監査法人の「問題ないよ」という監査報告が必要です。ちゃんと適切なお金の使い方をしてるよ、変な団体とのかかわりもないよ、といった点も監査法人がチェックします。

・監査法人が「大丈夫!」と言って、証券会社も「よし、監査法人も大丈夫と言ってるな。うちのチェックもOKだ。じゃあ取引所で取引してもOK」となれば、株式会社は上場することが出来ます。監査法人に「ダメじゃね?」と言われると上場できません。監査法人自身も、いい加減なチェックをしてると各処から怒られます。



さて。ここまでは一般的な話です。ここからが本題。


今回、Appbankは2015年10月15日に「東証マザーズ」という株式市場に上場しました。主幹事(主に株を取り扱う証券会社)は野村證券、監査したのはトーマツさんという監査法人で、日本の四大監査法人の一角です。(ちなみに、四大監査法人は「新日本」「あずさ」「トーマツ」「PwCあらた」ですが、今新日本監査法人は東芝の問題でエラいことになってますし、あずさもオリンパスの問題で怒られました。案外監査法人さんのポカというのはあるもんです)

当然、Appbankもトーマツさんによって、「この会社は大丈夫!」というチェックをしてもらった上で上場した、ということになります。


ところが、12月になって「元役員の業務上横領」などという事件が判明してしまったようです。この経緯は、Appbank自身によって開示されています。上記の通り、上場会社には「たくさんの投資家に投資してもらう」という関係上、自社の怪しいところは全部きちんと開示しないといけないという責任があるんですね。


当該元役員の方は、2015年の4月まではAppbankの役員であり、9月までは支払経理業務に携わっていたということで、時期的には上場審査の時期と被る可能性が高いです。

横領自体も、「株主のものである資産を、会社の利益と関係ないところに横流ししていた」という超大問題なわけですが、もし万一、この対象が反社会的勢力であって、「役員」という会社のど真ん中にいる人に反社会的勢力とのつながりがあったということになれば、「アレ?反社会的勢力とは関わりがないから上場出来たんじゃないの?」というところに抵触する、より一層の超大問題なわけなのです。

上記の通り、上場企業には社会的責任や説明責任があるので、これらの疑いについてはきちんと「こういうことだったんだよ!だから大丈夫!」とか、「こういうことでした!ごめんなさい!改善しました!」といった説明を詳細にしなくてはいけません。上の調査報告も、その責任に基づいて開示されたものです(こういう、企業からのいろんな説明や開示をIRといいます)

ただ、今回一部メディアの方は、「いや、それ説明になってないんじゃないの?」という突っ込みを入れている、ということなんですね。

その突っ込み内容は、突っ込んでいる記事の方を読んでいただければと思います。




ところで。

もし万一、上場企業に「会計監査が全然できてないじゃん」とか、「反社会的勢力とつながってんじゃん」ということが判明した場合、当然監査法人の責任も問われますが、その企業は監理ポストに入ったのち、上場廃止になる場合があります。

上場廃止の基準は下記のページなどにまとまっています。

有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき

ま、本当に反社チェックに引っかかって上場廃止されるケースはかなり稀なようですが。


今、Appbankの株式には、「○○円で買うよ!!」という値段がついていて、みんながその値段で取引をすることが出来ます。Appbankの株は今、株式公開によって高い水準になっているので、売却すれば大きな利益を手にすることが出来ます。

ただ、万一、万一上場廃止された場合には、そういった「市場での取引」というのはできなくなってしまうんですね。倒産しない限りは、株券の価値がゼロになるということはありませんが、市場外で取引をする場合には「その株を引き取ってくれる人」を見つけなくてはいけません。何かの問題で上場廃止になった場合、その株券を引き取ってくれる人を見つけるのは結構大変です。


上記までの話とは全く全然関係ないんですが、今Appbankの株は、かなりの割合を役員の方が保持されています(特にベンチャー企業としては、まったく珍しいことではありません)。

参照:

ここで、「180日間のロックアップ」と記載されているのは、IPOしてから180日は株式を売れないよ、ということです。10月15日に上場ですから、4月中旬くらいまでは株を売れないということになります。まあ、万が一にも上場廃止なんてことにはならないでしょうし、大した問題ではないですよね。問題ない問題ない。


何にせよ、疑義がすべて明らかになって、Appbankが今後とも健全な経営を続けていかれることを、強く望んでやまないというわけです。今後とも状況を観測してまいりたいと思います。



長々書いてまいりましたが、今日書きたいことはそれくらい。


posted by しんざき at 18:56 | Comment(1) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
で、これとむらいさんになんの関係があるんですか?

あまり適当なことを書かないでください
Posted by at 2016年02月10日 08:49
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