日本銀行のマイナス金利導入の影響で、10年国債金利までがマイナスに突入しました。
現時点では、日銀の狙い通りにイールドカーブが押し下げられています。
しかしながら、国債金利の10bp程度の低下が、経済活動をどの程度刺激するかは不明です。あくまでも現時点の事ではありますが、(おそらく期待とは逆に)急な円高・株安が進んでいます。
国債金利がマイナスになっている根本的な原因は、日銀が量的・質的金融緩和として国債の大量買い入れを続けていることにあります。既に、国債等の約1/3を日銀が保有しています。
マイナス金利が広がることは、国債市場の投機色を強めるとの見方があります。
- 作者: 徳勝礼子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/11/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
国債金利がマイナスならば、キャリーは基本マイナスだ。そうすると国債を投資対象として持つためには、キャリー収益を相殺するだけのキャピタル収益を確保しなければならない、ということになる。価格によって購入量が変わるわけではない日銀の定期的な買い切りオペは、マイナス金利で国債を購入しても、さらにマイナスの金利(債券価格は上昇)で国債を売れば収益が得られる環境を補助してきたともいえる。言い換えると、マイナス金利がますますマイナス金利を呼ぶということだ。
キャリーがなくてキャピタルを狙うというのは、やや誤解を承知で言えば、投資というよりは投機的な側面が出てくる。[…]マイナス金利は国債取引を投資から投機に変えてしまう。
マイナス金利において日銀がスムーズな買い入れを続けるためには、キャリーのマイナス分を上回る高値で買い入れることが必要になります。「次の買い手」が存在する限り、バブル価格での土地転がしが成立するように、日銀が「国債転がし」の最後の引き受け手になることで、国債価格をさらに上昇させようとしているわけです。
しかし、国債転がしがどのような経路で日本経済を力強く起動させるのかはよく分かりません。量的・質的金融緩和は、当初の思惑から外れて迷走状態に陥ってしまったように見えます。