先日、あるエンジニアから相談を受けました。何でも、その方の上司が嫌みっぽい人で、その言動に「イラッ!」とするのだそうです。
例えば、「もっと早く(プログラム)組めないの? オレが若いころはもっとガリガリ組んだものだけどな」と自慢げに話したり、「その案件、○○さんマターでお願い」のようにやたらと英単語を使うのが好きで、「マターって何ですか?」なんて尋ねた日には、「そんなことも知らないの?」と、人を小ばかにした言い方をしたりするのだそうです。
それらの言動にイライラし、思わず「言うだけで自分じゃ何もしないくせに!」「日本語で言えよ!」と心の中で思ってしまうのだとか。
本当は仕事に集中したいのに、度重なる上司の嫌みな言動の数々にイライラする毎日。「上司に何を言われてもイライラしない、怯まない、強靭な心を持つためにはどうすればいいのでしょうか」というのが彼の相談でした。
程度の差こそあれ、いますよね。こういう上司。いや、上司に限らず、すぐにサボりたがる同僚や部下、わがままな顧客など、「イライラ」の原因は職場のアチコチにあるでしょう。
仕事の不満や悩みを解消するヒントをお届けする本連載。今回のテーマは、イライラしたときの「乱れた心」の整え方です。
相談者が「上司に何を言われてもイライラしない、怯まない、強靭な心を持つためにはどうすればいいか」と質問しているように、「感情のコントロール」とは、「起こっている感情を抑え込もうすることだ」と考えている人が多いのではないでしょうか。
けれども、抑え込もうとすればするほど湧いてくるのが感情です。あなたにもありませんか? 本当はイライラした気持ちを抑えたいのに、抑えようとすればするほどイライラしてしまった経験が。感情というのは実に厄介なものですね。
それでも無理に抑え込もうとすると、精神的に制御不能になったり、抑うつ状態になったりしてしまうかもしれません。嫌みな上司の一言が負担になるなんて……悲し過ぎます。
では、「乱れた心」を整えるためには、どうすればいいのでしょうか。
「乱れた心」を整えるポイントは、「感情を抑え付けない」ことです。
だからといって、「昔を自慢すんなよ!」「日本語で言えよ!」と、やみくもに本音を言えばいい……というわけでは、もちろんありません。怒りを発散しようとすると頭の中が興奮し、さらに「イラッ!」のスイッチが入ってしまいます。また、相手は毎日顔を合わせる間柄です。上司ですから評価に関わるかもしれませんし、人間関係がぎくしゃくしたら、それこそ毎日が地獄です。
では、乱れた心を整理するためには、どうすればいいのでしょうか。
心理学者のダニエル・ゴールマンは、著書「EQ こころの知能指数」(講談社)の中で次のように言っています。
脳の構造からいって、情動が生起するタイミングや内容をコントロールすることはほとんど不可能だ。
イライラする気持ちは自然に湧き起こってくるものです。情動(感情)が起きるタイミングを意識の力でコントロールするのは難しい。そこで、上司の言動にイライラしたら、その感情を無理に抑え込まず、「イライラするのは仕方のないことだ」「イライラしてもいいんだ」と、イライラする自分を「よし」としてしまいましょう。
また、ダニエル・ゴールマンはこうも言っています。
ただし、情動の持続時間はコントロールできる。
つまり、イライラするのは仕方のないことだけれど、持続時間は短くできるよ……ということ。「抑え付けず。でも、流されず」のスタンスです。
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