厚生労働省は9日、自営業者や非正規社員が加入する国民健康保険(国保)の2014年度の赤字が、3585億円と前年度から447億円悪化したと発表した。赤字幅は4年ぶりの大きさとなる。加入者の減少で保険料収入が減る一方で、高齢化により1人あたりの医療費が伸びているためだ。政府は厳しい国保財政を支えるため、15年度から補助を増やす。
全国の1716市町村が運営する国保の財政を集計した。保険料収入は3兆571億円と507億円減った。加入者が3302万人と95万人減ったことが響いた。75歳を迎えて後期高齢者医療制度に移る人が増えているほか、主婦が働き始めて被用者保険に移る動きも目立っている。
医療費の支払いは560億円増え、9兆3585億円に達した。加入者が減る一方で、1人あたりの平均医療費がそれ以上に伸び、支払いが増えた。1人あたり平均医療費が伸びたのは「加入者の平均年齢が上がったため」(厚労省)だ。
国や都道府県からの補助金を入れても3585億円の赤字が出ているため、運営する各市町村の予算で3472億円を補填してまかなった。それにより、見かけ上の収支は113億円の赤字にとどめたが「厳しい財政状況が続いている」(厚労省)のが実態だ。
国保の財政が綱渡りなのは構造的な要因がある。加入者の平均年齢は50.4歳と、大企業の社員が入る健康保険組合(34.3歳)を大きく上回る。そのため1人あたりの医療費も2倍以上に膨らんでいる。一方で非正規社員や退職した高齢者、失業者など年収が少ない加入者が増えている。そのため、保険料の大幅な引き上げは難しいという現状がある。
政府は国保を支えるため、財政支援を2015年度から年1700億円、17年度からは年3400億円上積みすることを決めている。また18年度には国保の運営を市町村から都道府県に移して、財政基盤を安定させる。
14年度の国保の保険料の納付率は90.95%と5年連続で上がり、14年ぶりの高い水準となった。加入者の所得が増えて支払いの余力が高まったことに加えて、滞納者の財産を差し押さえるなどして督促を強化したことが奏功した。
厚生労働省、厚労省