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国産カカオを使ったチョコレートの開発に成功、東京・小笠原諸島で栽培

THE PAGE 2月9日(火)19時53分配信

 日本のチョコレート生産のスタイルがこれから変わるかもしれない。埼玉県草加市の老舗製菓会社が小笠原諸島・母島産の国産カカオを使ったチョコレートの開発に成功し、9日、都内で発表した。

 チョコレートの原料となるカカオは、赤道を中心とした南緯20度、北緯20度以内で、最低気温が16度を下回らず、年間雨量が1000ミリ以上のいわゆる「カカオベルト」と呼ばれる限られた地域で主に栽培されている。それゆえに、生産量も限定されている。その一方で、途上国などでチョコレートの需要が拡大しているため、カカオの国際商品市況はこのところ高騰している。このため、消費国の一部では、カカオの地産地消の研究に関心が向いている。日本も例外でなく、複数の研究機関が取り組んでいる。

 チョコレート菓子などのOEM(相手先ブランドによる生産)を中心に行っている平塚製菓(埼玉県草加市)の平塚正幸社長は、東京産のカカオを使ったチョコレート作りに取り組みたいと、いち早く取り組みを始めた一人だ。2003年に実際にガーナの農園を訪問するなどして「世界一おいしいチョコレートをつくりたい」とプロジェクトを立ちあげた。その後、2010年に小笠原諸島の母島で独自にカカオ栽培を始めた。

 しかし順調にはゆかない。当初、カカオの木167本を植樹したものの、すべて枯れてしまった。しかしそこに救いの手がさしのべられる。このプロジェクトに共鳴した小笠原村で折田農園を経営する折田一夫さんが、平塚製菓に自ら連絡をとってコラボを申し出たのだ。折田さんは母島で無農薬、有機肥料にこだわってレモンやパッションフルーツ、マンゴーなどを栽培している。平塚社長は折田さんのふるまってくれたマンゴーのおいしさに感動し、折田さんと共同での再チャレンジを決意した。

 大規模な農地が必要で、本土から重機やハウスの資機材を船で輸送する難事業だったが、それでも時間をかけて粘り強く取り組んだ結果、2011年8月にハウスの1号棟が完成。翌年4月から栽培がスタートした。ハウスは潮風や風速60メートルの台風にも耐えられる丈夫なつくりにしたという。

 待望の初カカオの収穫は2013年10月だった。11月には草加市の平塚製菓本社にカカオポッドがとどき、その後は手探りで、発酵・乾燥にも取り組んだ。そして2015年3月、構想から13年の時間を経てチョコレートの試作に成功した。味はマイルドで香り高いチョコレートに仕上がったという。母島産のカカオは「東京カカオ」と名付けた。

 平塚社長によると2016年には、板チョコにして1万5000枚分に相当する0・5トンのカカオの収穫を見込む。さらに2017年には2トン、板チョコにして7万枚分の収穫を目指す。さらに今後量産のメドをつけ、2018年には東京カカオを使ったチョコレートの販売を予定している。

 平塚社長は「国産カカオは無農薬栽培でき、自分たちの目が行き届く。Tree to bar という言葉のように、カカオの木から板チョコまでの流れを開発してゆきたい」と意欲を見せている。国産カカオによるクラフトチョコレートのブランドが確立できるか。これからも平塚社長と折田さんの取り組みに目が離せない。

*平塚製菓 本社・埼玉県草加市。創業115年(1901年)。相手先ブランドによる生産(OEM)を中心に、チョコレート、焼き菓子、ウエハースの生産・委託加工・開発を手がけている。 

(3Nアソシエイツ)

最終更新:2月9日(火)22時11分

THE PAGE