【追記あり】AppBank社への公開質問状(暴力団がらみ)

君のハートへ届け(写真:アフロ)

山本一郎です、お世話になっております。

どうも、この手の証券系の問題が分からないという読者の方から反響を少しいただいていたようで、また、AppBank社のマックスむらいこと村井智健さんからも暖かい動画メッセージを頂戴しましたので、既存記事ながら冒頭で問題意識と状況を整理したいと思います。

■「山本さんはAppBank社やマックスむらいさんが嫌いなの?」

好きですよ。愛読していましたし、AppBankで見たゲームを多数ダウンロードしています。

■「それなのに、AppBank社の問題をなぜ取り上げているの?」

AppBank社が犯罪に巻き込まれていることが確定しているからです。

マックスむらいのAppBank「経理部門の責任者であった元役員が約1億4千万円を業務上横領したと疑われる事実が判明いたしました」(かぶ全力2階建 15/12/10)

経理部門の責任者であり、後にAppBank社の役員となる木村さん(仮名)が、架空の取引先を作り、そこに不正送金する形で、1億4,000万円以上の資金を流出させてしまいました。

まずここで、AppBank社は被害者であると同時に、この役員(経理部門責任者)が横領したことへの管理責任を問われます。

なぜAppBank社が責任を問われるのかというと、AppBank社は株式をマザーズ市場に上場している企業だからです。つまり、AppBank社は、投資家からお金を集め、適切な経営のもと事業拡大し、利益を上げていますよ、だから皆さんAppBank社の株式を買ってくださいね、投資してね、という立場です。誰かが好きか嫌いかではなく、投資家からお金を出してもらって経営している上場企業は、市場や投資した株主に対して状況を説明する責任があります。

今回のように、このAppBank社の役員が不正をしていました、ということであれば、AppBank社は速やかに投資家に謝罪をし、実態の調査を行い、仕事の仕方の改善をしなければなりません。

しかし、問題が発覚して2ヶ月が経過しましたが、現状ではAppBank社内の調査委員会による調査報告書が開示されただけの状態です。まだ木村さんに対して刑事告訴をした話も聞こえてきません。

1月28日の調査報告書には対応として速やかに刑事告訴をする、と書かれているのです。

また、調査報告書によると「資金使途について木村氏から上申書を受領しており、上記のほか、以下の支払が記述されているが、本調査委員会は、事実確認が行えなかった」とあり、その資金使途のひとつに「恐喝」という項目があります。3,000万円から3,500万円もの資金がどこかに消えており、報告書には確認できなかったとありますが、事実であるならば重大な事案です。

そこで、私が独自にAppBank社の関係者に事情を聞き、調査をした結果、木村さんが「右手の小指が欠損した人物」に恐喝をされた、と説明している文書や証言が出てきました。あくまで関係者への取材によって出てきた内容であって、現時点で裏付けのない話ではありますが、当時のAppBank社の現役役員(経理部門責任者)が、内容を信じるならば単に1億4,000万円の横領をしただけでなく、問題のある人物に脅されてお金を渡したことになります。

これは、大変なことです。

■「AppBank社本体に取材はしたの?」

記事のとおり、この問題について事情を確認するため、事前に質問メールを送っています。

15年12月19日、16年2月5日に、AppBank社経営陣である村井智建さん、宮下泰明さん、廣瀬光伸さん、AppBank Store代表酒井秀樹さん、旧むらいスタジオ取締役古見幸生さんに質問状を送りましたが、彼らからは「回答できません」というような取材拒否の返答さえもありませんでした。無回答です。

なぜこれを問題視したのかというと、木村さんの証言が事実であるならば、AppBank社は単なる巨額横領事件ではなく、当時の現役社員による直接の反社会的勢力と強く疑われる人物との関わりという重大な事件になるからです。

もしもAppBank社から「問題については警察庁に相談をしています。判明し次第、公表します」とでも返答されていれば、おそらくAppBank社の件は記事にはしなかったでしょう。

■「その証言に信ぴょう性はあるの?」

マックスむらいさんは、動画の中で「調査委員会は横領した資金使途として木村本人から聞き取り調査した内容を記載しています。その中で今話したこの部分については恐喝というように調査資料に記載されました」としています。木村さんの上申書が調査委員会と専務CFO廣瀬光伸さんにきちんと渡って検証されていることを、村井さん自らが明かしておられますね。

そして「調査委員会、不正調査の専門家、弁護士の先生方は、この話の信ぴょう性に関して極めて乏しく裁判でも一切信用されるものでもない、信ぴょう性のない情報であるという結論を出しています。この話は現時点では確認のしようのない話です」と説明しています。

しかし、その内容の確認こそが、調査に求められていることでしょう。

当然ですが、常識的には木村さんの上申書に書かれている「右手の小指が欠損した人物」とは反社会的勢力であることが強く疑われます。恐喝されたとする3,000万以上という高額から考えても、重要事項として繰り返し聞き取り調査をし、背後関係や人物像について整理して内容を吟味しなければいけません。調査委員会が確認できなかったとしている「恐喝」の事項ですが、伏せられている木村さんの経歴や人間関係から、真相に迫るしかるべき調査をきちんとしたのでしょうか。いつ誰にどのような聞き取りをして、どのような情報をもとに確認できずとしているのでしょうか。説明責任を果たした内容とはいえず、疑問がのこります。

逆に、この証言を調査委員会が信ぴょう性があるとした場合、AppBank社が株式上場審査の過程で現任の取締役である木村さんが反社会的勢力と関わりがあった、という結論にならざるを得ません。この事実だけで、監理ポストにAppBank社が入ってしまう虞があります。監理ポストとは、上場廃止基準に該当する虞があるとき、その事実を投資家に衆知させるために設けられている仕組みのことです。

つまり、AppBank社の開示した調査委員会報告書は、反社会的勢力とAppBank社の繋がりを明示したくないために、敢えて発表に盛り込まなかったのではないか、という疑いもないでもありません。一番大事なところなのに、そこをなぜ、事態がある程度判明するまで調べないで信ぴょう性が乏しいと判断したのか、AppBank社やマックスむらいさんの説明では分からないのです。

横領だけでも大変な事件なのに、恐喝まであるならば、事実関係の確認のためにAppBank関係者に取材し独自に調査するのは当然のことです。村井さんも動画の中で「週末に山本一郎氏の下部組織の面々から、AppBankの過去の退職者宛に社内情報を持っていないか、木村の連絡先を知らないか、他の退職者の連絡先を知らないかなどなど連絡が回っているということを報告受けて」と仰っておられ、きちんとした取材活動に基づいた記事であると認めていただいております。ありがとうございます。

AppBank社に対しては、木村さんの経歴から遡って彼がどのようなトラブルを抱えていたのか、どういう人物と接点があったのかも含めて、きちんとした追加調査を実施し、結果を公表する責任があると思います。

事後にビデオで「調査委員会の判断として信ぴょう性に乏しかった」と発言するだけではなく、事前に「事実関係をきちんと確認するため警察庁に相談しています」と質問状に返事があれば、こちらも「そうでしたか」で終わったはずの案件です。

しかし、現状では追加調査の確約もなく、明確な説明もされないままに、証券業界と暴力団・反社会的勢力の状況も分からない小学校中学校の子供たちに曖昧な動画だけ投稿をしているようでは、マックスむらいさんに問題を解決するつもりはないのかと感じてしまいます。

■「むらいさんに説明してほしいことは」

以下本編記事にも質問事項を掲載していますが、動画の冒頭で村井さんが「appbankは、私は、暴力団と関係を持ったことが一切ありません。ここにはっきりと断言させていただきます」とあります。

村井さんがそう断言するなら私もまずは信じましょう。

こちらも、過去記事の表現を一部修正しておきます。

ただ、追加で質問があります。

a) 元役員の木村さん(仮名)の職歴を教えてください。

b) 木村さんの横領した資金の不明分の使途について、追加調査を行う予定はありますか。

以上です、では本編。

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山本一郎改め「一部メディア」です。一時期は「一部ブロガー」と呼ばれておりました。お世話になっております。

さっき某中華系大手ネット企業の前を差し掛かったら電気がついてませんでした… 彼らの身に何が。

ところで、みんな大好きAppBankから面白い感じのIRが出ていました。毅然とした法的措置をとるそうなので、暖かい気持ちで待ちたいと思いますが、結局のところ、疑義に関する質問には何一つ回答されず、また社としても開示された内部調査委員会の調査報告書以上の具体的な開示が見受けられません。

具体的な事実に基づく指摘や質問には回答できないのに、IR文学的に「真実に基づかない」とか堂々と嘘をつかれると私はとても穏やかな気分になるわけですが、前回の記事でも指摘したとおり、3年間約1億4,000万円におよぶ元役員木村さん(仮名)の横領は犯罪以外の何者でもありません。その点では、AppBank社も犯罪の被害者であるというのはもっともです。

しかしながら、木村さんが重要事業の会計責任者、ならびに1ヶ月とはいえAppBank社の取締役として登記され、その本人が、調査委員会からの聴聞で「犯罪組織からの接触を受け、過去の経歴の暴露やご母堂への危害を匂わせる恐喝を受けて、3,000万円から3,500万円の資金を渡した」と供述したことがAppBank社としても知るところであり、上場前のAppBank社が彼を通して暴力団関係者に資金を渡したと思われる事件であることには変わりありません。

常識的には、謝罪会見を開くレベルです。

弊社に関する一部メディアの記事について

AppBank社、元役員の横領金の流出先に「暴力団関係者」の疑い 調査報告書に記述せず(ヤフーニュース個人 山本一郎 16/2/6)

そこは正式なIRでやれ、AppBankのマックスむらい「AppBankと私は暴力団とは一切関係ありません。隠蔽の事実もありません」(全力かぶ2階建 16/2/6)

アップバンクの蹉跌、荒稼ぎに元役員不正も「第2のgumi」か、お粗末なIPOになる可能性(東洋経済 16/1/12)

本件については、東京証券取引所が一般の投資家に対して運営しているマザーズ市場での事件であり、AppBank社もそこにパブリックに株式を売買させられる銘柄である以上、本件に関する疑義が公益性を持つことは疑いようもなく、内容については複数の関係者から事情を聴いております。また、記事執筆の前である2015年12月19日、16年2月5日に、AppBank社経営陣である村井智建さん、宮下泰明さん、廣瀬光伸さん、AppBank Store代表酒井秀樹さん、旧むらいスタジオ取締役古見幸生さん全員に質問状を送達しています。そして、疑問や懸念に対して、取材拒否の返答もなく直接の回答もないまま現在にいたっております。これが、株式を市場に公開し、投資家に対して説明責任を負う上場企業の行うべき対応なのでしょうか。

つきましては、いろいろ書きたいことはありますが、まずは以下の3点について、公開質問状とさせていただきます。

1. Appbank社の木村さんによる横領事件は、通常の会計ではなく15年11月に行われた国税局の税務調査において発覚したもので、貴社の決算も含む通常会計調査では発見できなかったと関係者が証言していますが、事実ですか。これが事実だとするならば、常識的な企業からすると極めて厳しいはずの”30,000円以上の支出は専務CFO廣瀬さんによる決済承認がなければ支払われない”というスキーム自体が機能しなかったことになり、最低限の請求書と支出額の突合せも行われていなかった、ということになります。

この実態に対して、なぜか内部調査報告書は隠蔽されたものであるから見抜けなかったとして「AppBank 社経営陣に対し,本件不正取引を未然に防止し得なかったことに対する法的責任が問われるような事案ではない」と結論付けられています。驚くべき事態について、AppBank社が杜撰な支払い管理の決済責任者であった取締役CFO廣瀬さんに対する早急に厳格な処分を行わない理由は何でしょうか。

2. 暴力団との関係について伺います。すでに内部調査委員会の聴聞に関する書類でもあるとおり、当時AppBank社の管理要職にあった木村さんは”AppBank社に在職時代に暴力団関係者から恐喝を受け”ており、”その結果として、AppBank社から不正流出させた資金を暴力団関係者に手渡ししている”という証言があります。内部調査委員会の報告書には、被害額の内容として「恐喝 3,000万~ 3,500万」と記述されているのはすでに開示されているとおりです。

当然のことながら、AppBank社の取締役にまで就任した枢要な人物である木村さんが、暴力団関係者から恐喝を受け、そして資金を渡したとされることは、木村さん本人の責任によるところもあります。木村さんが刑事的処罰を受けることは妥当なことです。そのうえで、本件はAppBank社自体のガバナンスの問題でもあり、市場や株主に対して事情につききちんと説明する必要があると思いますが、この報告を受けて、恐喝の詳細を調査指示した、調査会社などに委託した、あるいは、警察庁などしかるべき当局に相談した経緯はありますか。

3. 15年5月、木村さんのAppBank社取締役を退任していますが、この解任に近い退任は、上記横領などの問題発覚による引責ではないという理解でよろしいでしょうか。この退任にあたって、複数の関係者や書類によりますと、事業の進め方や人事について、専務CFO廣瀬さんおよび代表取締役の宮下さんと、木村さんが鋭く対立したことが経緯であったとされています。しかしながら、横領に関する報告書においては、木村さんの最終人事に関する調査報告が項目として開示されていません。

この問題について、AppBank社として組織的にどのような処理をし、経営判断として木村さんを退任させた形でしょうか。状況についてお聞かせください。

以上、質問条項として掲載させていただきます、差し支えのない範囲内でご回答賜れますと幸いです。AppBank社の皆様方におかれましては、ご多用のところ大変恐縮ではございますが、ご善処のほどよろしくお願い申し上げます。