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「VAIOフォンの失敗は、私の責任だ」

東洋経済オンライン 2月9日(火)8時5分配信

 一体何が誤算だったのか。多くのファンの期待と注目を集めたスマホは、どうやら不発に終わりそうだ。

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 MVNO(仮想移動体通信事業者)の草分けである日本通信は、ソニーから独立したVAIO社と共同で「VAIOフォン」を昨年3月に発表した。日本通信は法人、個人向けの双方で販売してきたが、2016年第3四半期(4~12月期)にVAIOフォンの在庫評価減を実施。この影響で、同社の決算は14億円の営業赤字に転落し、通期でも15億円の営業赤字となる見通しだ。

 在庫評価減の理由は「評価減をしておかないと、法人向けにVAIOフォンをじっくりと売っていけないから」(福田尚久社長)だという。すなわち、今後、 在庫を完売するのに法人向けで顧客と折り合った価格があり、そこまで在庫評価を落とすというわけだ。

 福田社長や三田聖二会長は明言を避けたが、完売した後は、新たにVAIOフォンの製造を受託会社に依頼することはなさそうだ。

■ なぜ「VAIO」ブランドでも売れなかったのか

 発表当初、VAIOフォンは大注目を集めることになった。5万1000円という高価格ながら、パソコンにおけるVAIOのイメージとはかい離のある、ごく普通のデザイン、スペックだったからだ。

 パナソニックの「ELUGA U2」(台湾クアンタによるODM=受託生産)と酷似している点も指摘され、ITジャーナリストからは疑問や批判が飛んだ。

 どうしてVAIOフォンは売れなかったのか。どこに誤算があったのか。1月29日、4カ月ぶりに日本に帰ってきたという三田会長が決算説明会という公の場で語ったのは、自らの過ちだった。

 会見での主な質疑応答は次ページの通りだ。

 ――そもそも、VAIOフォン戦略とは何だったのか。

 VAIOフォンの発表当時、(どの通信会社の通信網でも利用できる)SIMフリーの良い端末が出ていなかった。われわれは、法人が一番評価するブランドがVAIOだと思っていた。

 VAIOは今でもグローバルで力があるブランドで、しかも消費者の認知度も高い。そこで、法人向けでも、消費者向けでもブランド効果があるVAIOを使えばよいと判断した。

 ――どういった経緯でVAIOフォンを開発することになったのか。

 私はソニーのコンピューター事業の立ち上げに深く関わったことがある。VAIO社とは、ソニーから独立した後、「ノートパソコンだけでなく、スマホ端末を作らなければVAIOというブランドは生き残れない」という考え方で一致し、共同開発した。

 ――何が最大の誤算だったのか。

 私の立場としておそまつだったのだが、(VAIOフォンの製造を委託した)台湾クアンタはノートパソコンの製造最大手だが、スマホを作ったことがない、ということを知らなかった。スマホの製造の難しさは、ノートパソコンの100倍。たとえば、今のスマホには基板というものがない。基板はガラスと一体化している。

 しかも、(製造を委託しようと思っていた)世界2位のガラスメーカーが2014年12月に経営破綻した。それで、ほかのガラスメーカーを探さないといけなくなった。

■ 出荷までの時間のロスが命取りに

 ガラスは画面だけではなく基板なので、ゼロから中国を駆け回って、新たにメーカーと打ち合わせをして作ることになり、それで(発売が)3カ月遅れた。普通は1年かかってもできないくらいのことだが、クアンタも頑張って3カ月で出してきた。

 VAIOというブランドに効果があると思っていたが、製品発表(2014年12月)から出荷まで3カ月待たせたことで、消費者向けの市場が冷えてしまった。どんなにブランド力があっても同じ事が起こる。(消費者が)ブランドで動くという効果が(3カ月遅れたことで)薄まってしまった。

 VAIOフォンの製品価値はいろいろな方から評価していただき、良い製品だというのが残っているのは事実だし、消費者向け以外の市場でのブランド力は生きている。

 ただ、消費者向けの製品として、消費者向けの販売チャネルで「同じ製品のようなものだけど、こっちのブランドのほうがセクシーだから買いましょう」という影響は冷えてしまった。それが利用できなくなったというのは、「私が責任を持たなくてはいけないチョンボの一つ」というふうに歴史に残るのではないかと思う。

 (ちなみに、VAIO社は2月4日、自社設計のWindows10搭載スマホ「VAIO Phone Biz」を発表した。「VAIO」はソニーの登録商標で、VAIO社が分社・独立した後も、ソニーから商標を借りて使用している)

山田 雄一郎

最終更新:2月9日(火)20時50分

東洋経済オンライン

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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