■ 放鳥トキの送信器
2008年9月にトキ10羽が試験放鳥されました。10羽のうち6羽は背中に「送信器」を装着しています。
この送信器によってトキが過去にいた場所とその時間が分かるようになっています。
6羽につけられている送信器について、環境省佐渡自然保護官事務所に聞きました。
2008年9月25日に放鳥されたトキ・個体番号No.4。背中に送信器のアンテナが見えます。(写真提供:
環境省)
■送信器のしくみを教えてください。
トキの位置情報は、携帯電話についているGPS(全地球測位システム)
装置と同じように人工衛星からの信号を利用して時間と場所が送信器に記録されます。
その情報は3日や10日おきにまとめて別の人工衛星に送信されます。その情報はフランスにある「アルゴスシステム」
のデータセンターを経由して、トキモニタリング専門チームが受け取ります。
■どうしてアルゴスシステムを使うのですか?
今回の位置情報を知るしくみを「アルゴスシステム」といいます。アルゴスは、
日本も参加している人工衛星を利用した国際的な地球環境データ収集システムです。運用管理は、
フランスの国際機関が設立した会社が行っています。
アルゴスシステムの優れた点は、探査範囲が限定されていないことです。
仮にトキが佐渡から離れて世界中のどこにいっても位置情報を得られます。アルゴスシステムは地球環境調査のほか、
生物の行動調査でもよく使用され実績をあげています。
■どうして全羽が送信器をつけていないのですか?
理由としては、メスはオスにくらべて体重が軽いため、
メスに送信器をつけると行動に支障となる可能性があるからです。
なお、動物に機器類をつける場合、重さはその動物の体重の3%以下がよいとされています。このため、今回は専門家の指導の下、
行動の支障とならない等さまざまな面を考慮し、オス全羽とメスで体重の一番重いメス1羽、計6羽に送信器をつけました。
■位置情報を調べる理由を教えてください。
位置情報を継続して調べることで、トキがどこでエサを食べ、どこをねぐらにしているかなど、行動の軌跡が分かります。
トキモニタリング専門チームは、送信器から得られた情報を利用して、トキの追跡調査だけでなく、
トキが利用した場所の調査などを行うことができます。
■どうして直接トキから信号を受信しないのですか?
もちろん、位置情報はできるだけ早く知りたいのですが、位置情報を随時送信するものだと、送信器の構造が複雑になって送信器が重くなります。
他にも、電池が早く消耗して送信器が使えなくなります。ただ、送信器の情報だけでは、
どんな環境をトキが利用しているのかなどより詳細な情報がわかりません。このため、送信器の情報も参考にしながら専門チームや市民など、
人の目による観察が重要となります。