万が一、特殊詐欺グループに入ろうと思っているならば、いますぐ考え直した方がいい。高い目標が設定され、身も心もボロボロになるまで詐欺行為をさせられる。警視庁が1月に摘発したアジトからは、あの熱血元プロテニス選手の日めくりカレンダーも押収。リーダーは“熱い言葉”を悪用して構成員の尻をたたき、犯罪行為を繰り返させていた。《できるできる、君ならできる!》。熱い至言の数々は犯罪ではなく、真面目に働く人のためにある。
突入の命令を捜査員たちは今か今かと待っていた。1月27日、東京都新宿区四谷のオフィスビル周辺に、警視庁捜査2課などの捜査員が集結していた。
取り囲んでいたのは、特殊詐欺グループのアジト。これまでの捜査で、宅配便などで現金を送らせる手口で詐欺を繰り返していたことが判明。20代の若者を中心に複数の男が頻繁に出入りする光景も確認されていた。
いまや特殊詐欺のアジトは、警察当局による摘発を見越し、二重三重に備えている。水溶性のメモや、携帯電話を即座に使用不能するために水を張ったバケツを準備するのは当たり前。証拠書類に着火して処分する際、炎が周囲に燃え広がらないようにするフライパンまでも用意している。
だが、今回の現場はひと味違った。いくつものアジトに踏み込んだベテラン捜査員ですら、目の前に広がった光景に戸惑いは隠せなかっただろう。
copyright (c) 2016 Sankei Digital All rights reserved.