台湾では旧暦の正月にあたる春節は、家族で年を越す大事なときだ。その直前を襲った地震で、肉親や友人らを失った悲しみは察するにあまりある。

 高雄市を震源とする地震は、多くの犠牲者を出した。隣の台南市で倒壊した16階建てマンションの現場では、いまも懸命の救助活動が続いている。

 歴史的、地理的に近い日本と台湾は、ともに台風などの自然災害が多い。ユーラシアプレートの縁(へり)である地震の多発地帯にあり、震災のリスクという同じ問題を抱えている。

 日本政府は「必要な支援を何でもする用意がある」との、お見舞いメッセージを伝えた。

 できるかぎりの支援を考えたい。中・長期的には、災害への備えを強める防災面での連携もさらに強化したい。

 まずは人命救助が最優先だ。救出作業への直接支援は不要のようだが、医療や復旧への支援などは検討できるだろう。

 マンション現場では、建物のがれきから一斗缶が見つかり、欠陥工事との見方がでている。倒れた原因を調べ、建築基準やチェック体制などを学びあうこともできるかもしれない。

 日台間にはすでに地震対策をめぐる交流の蓄積がある。

 99年の台湾中部大地震では、日本が緊急援助隊を派遣し、生存反応を調べる装置やエアカッターなど当時の最新機器を駆使した。多くのNGOも現地入りし、阪神大震災で使われた仮設住宅も贈られた。

 東日本大震災では、逆に台湾から厚い支援の手が差し伸べられた。台湾の消防の救援隊や、高度な災害救助ノウハウをもつNGOが活躍したほか、息長く支援活動をした仏教系団体もあった。170億円もの義援金が届けられたことは、日本社会に深い印象を残している。

 その恩返しの意味も込めて、東北の被災地などから、支援の動きが出始めている。民間の支え合いがいっそう広く根を張るよう期待したい。

 近年、日本政府は防災を国際貢献策として高く掲げており、昨年3月には仙台で第3回国連防災世界会議が開かれた。国連の「持続可能な開発目標」は、都市など人間の居住地の安全向上を求めている。

 大震災の経験を生かし、発生後の対応だけでなく、平時から災害に強い社会をつくる取りくみを国際的に共有することは、日本の平和外交にも資する。

 地震の発生に国境はない。台湾と日本が互いに学びあうことは、防災で国際関係を築く先行モデルにもなり得るだろう。