いやあ、とうとう来ました。光学ズーム搭載スマホ。
かつてSamsungやニコンが出していたけれども、あれらは「デジカメ」と「スマホ」を合体させた製品であり、スマホのカメラに光学ズームが付いたわけじゃない。その点、ASUSの「ZenFone Zoom」(2月5日から順次発売)は純粋な光学ズーム付きスマホである。さてそのデキはいかに。
実物を見て驚いた。思っていたよりずっと薄い。最近はスマホの薄型化が進んでいるから、それらと比べればそりゃあ厚いけれども、この薄さなら持ち歩きの不便さもないし、背面がうまいこと曲面になっているので、カメラ部のでっぱりもなく、きれいに処理してある。
その分、見た目の「おれは光学ズーム付だぜ」的な主張はないけれども、そんなのはいらないのである。
スイッチを入れるとレンズが伸びてくるの?……伸びないのである。こんなに薄いのに、ほんとに光学ズームなの?……ズームなのである。
その秘密は「屈曲光学系」にある。
これの光学系を最初に搭載したのはミノルタ(当時)の「Dimage X」。2002年のことである。たまたま手元に2003年に出たDimage Xtの写真があったのでどうぞ。まだ珍しい方式だったので、ボディの側面に「中にレンズがこう入っていますよ」という構造図のシールが貼ってあったのだ。
これは分かりやすい。
正面から入った光はプリズムで90度下に反射し、底にあるイメージセンサーがそれを受け取るのである。ズーミングは内部のレンズを動かして行うのだ。この方式はボディを薄くできる上に、レンズをぶつける心配もないのである。
その後、ソニーの「Cyber-shot T」シリーズなどで一世を風靡(ふうび)したが、いつしか時代のニーズに合わなくなったのか廃れていき、今は、オリンパスのToughシリーズなど防水耐衝撃タフネスコンデジ(防水や耐衝撃性を考えるとレンズが飛び出るのは都合が悪いから)でのみ生き延びている。
それがスマホで復活したのだ。懐かしい。しかもZenfone Zoomのはプリズムが2つ入っている。
レンズから入った光はプリズムでいったん下に曲げられ、最後にまた90度曲げられているのである。プリズムが2つ。きっとその方が薄く作れるのだろう。
細かい構造はどうでもいいのだが、撮影時でもレンズは1ミリも飛び出ず、ズーミング時はボディに縦(横位置で構えたとき)に入っているレンズの一部がひそかに動いていると思ってもらえればよし。
では早速撮影。
本体側面には動画用と静止画用それぞれのシャッターボタンがある。これを長押しすると自動的にカメラが起動する。
起動は、ズームレンズが入っている割には遅くない。
画素数は1300万画素、レンズは3倍ズーム。35ミリ判換算で28〜84ミリで、3倍ズームレンズとしては非常に標準的で使い勝手のいいレンジだ。
レンズの明るさは広角側でF2.7、望遠側でF4.9。ちなみにこのF値は小さければ小さいほど明るく(光をたくさん通す)、暗所に強くなる。iPhone 6sはF2.2、Xperia Z5はF2.0。イマドキのスマホはだいたいこのくらい。ズームレンズにするとどうしても明るさ的には不利なのだが、F2.7で抑えたのは立派だ。
基本となる広角側で、まずはいつものアレ。比較対象としてiPhone 6s Plusでも撮影。画素数は1300万画素と1200万画素で、似たようなものだ。画角も28ミリ相当と29ミリ相当で、ほぼ同じ。
絵作りの個性で青空の出方はずいぶん異なっているけど、ZenFone Zoomはかなり頑張っている。等倍で比較すると、ZenFone Zoomの方がシャープネスが強めな感じだ。
青空の発色が面白いくらいに違うけれども、どちらも目で見た感じよりお化粧を施しているわけで、どっちがいいかは微妙なところ。
でもZoomというからにはZoomしたいよねということで。
3倍ズームっていうと、イマドキのデジカメ的には低倍率なんだけど、実際にはこれだけでかく撮れるのだ。しかもデジタルズームとは画質が全然違う。望遠では画質が少し落ちるけど普通に使うには十分なクオリティである。
ズーミングの方法は2種類。1つはボリュームキー。よく見るとT(Tele)とW(Wide)の刻印がある。これでズーミング可能だ。
もう1つはピンチイン/アウト。2本指で広げてやると望遠に、逆で広角になる。ただ、カメラとして構えた状態で2本指操作はちょっとしづらい。
一度ズーミング操作を行うと、画面にズームバーが表示されるので、そこをドラッグしても可能だ。初めから上下方向にドラッグしたらズーミング、というような小技が欲しかったかも。
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