東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)の入園料金がまた上がる。運営するオリエンタルランド(OLC)は8日、東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)の入園券を4月1日から値上げすると発表した。2014年4月の消費増税に伴う料金改定を含めれば、3年連続の値上げとなる。テーマパーク業界に吹く追い風を好機と捉え、値上げを原資に成長投資を加速する。
今回の値上げは「パスポート」と呼ぶ入園券15種のうち13種が対象。1日券は18歳以上の大人を現行より500円高い7400円とし、12~17歳の中人は400円高い6400円、4~11歳の小人は300円高い4800円にする。団体向けや1年間有効の入園券も値上げする一方、午後の指定時間以降に入園できるパスポートは据え置く。
大人の1日券はここ2年で1200円値上がりするものの、OLCは今回の値上げも「入園者が減らない範囲にとどめている」と説明する。
期初から大人1日券を500円値上げした16年3月期について、OLCは年間入園者数を前期比3%減の3040万人と見込む。ただ、落ち込みの原因は14年3月期、15年3月期にTDL開園30周年や大型アトラクションの導入などで入園者が伸びた反動のためだ。
実際、集客に値上げの影響は少ない。天候不順が響いた15年4~9月期は5%減だったものの、ハロウィーンのイベントが盛況だった10月は過去最高の入園者数を確保。12月もクリスマスの集客が好調に推移し、10~12月期の入園者数は前年同期並みとなっている。
消費者のお金の使い方が「モノ」から「コト」へ向かうなか、体験型の娯楽を売り物とするテーマパークは好調が続く。経済産業省が8日発表した特定サービス産業動態統計(速報)によると、15年の市場規模は14年比8.3%増の6557億円だった。
TDRは入園者の平均滞在時間の伸びが続き、15年3月期には9時間を突破した。訪日外国人客の増加も追い風となっており、SMBC日興証券の前田栄二シニアアナリストは値上げを「自信の表れ」と指摘。「17年3月期の客単価は今回の値上げ分で平均200円上がる」と分析する。
テーマパーク業界ではユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)が2月に7年連続となる値上げを実施。TDRも今回の値上げで1日券がUSJと同額になる。野村証券の山村淳子アナリストは「これまで競合テーマパークと比べて安かった。入園者数への影響は8500円程度まで出ない」とみる。
テーマパークは常に新しい魅力の提供が求められる。USJが7年連続の値上げに踏み切れたのは値上げによる収益の拡大が投資に回り、新たな投資が次の集客につながる好循環にあるからだ。
OLCも今後23年度までに5000億円規模を投じ、年間3000万人以上の集客を維持するための施設の価値向上に取り組む。「過去には4~5年に1回だった値上げの周期が今後は短くなる可能性がある」(野村証券の山村氏)。
東西の二大テーマパークは「大人1日7000円台時代」に突入した。装置産業のテーマパークには収容能力という成長の天井がある。値上げの余地も狭まるなか、経営のかじ取りは着実に難しくなっていく。(広沢まゆみ、岸田幸子)
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